日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹痛と嚢胞性病変の増大縮小を繰り返した上行結腸間膜内異所性膵の1例
本明 慈彦伊禮 俊充清水 洋祐種村 匡弘富永 春海畑中 信良
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2014 年 75 巻 9 号 p. 2549-2554

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抄録

症例は19歳,女性.右下腹部痛を主訴に当院紹介となった.腹部CTで上行結腸内側に径34mmの嚢胞性病変を認め,上行結腸憩室炎の診断で保存的加療を行い軽快した.しかし同様の症状による入退院を繰り返したため,虫垂病変に伴う膿瘍形成を疑い,腹腔鏡下虫垂切除術を施行したが,その後も2カ月毎に症状の増悪と軽快を繰り返した.経過中,症状増悪時には嚢胞性病変の増大と炎症所見を認め,軽快時には病変は縮小していた.繰り返す腹痛の原因を上行結腸間膜内の嚢胞性病変と断定し,初診から2年6カ月後,根治治療目的に腹腔鏡下回盲部切除を施行した.病理組織学的検査で,嚢胞性病変は拡張した導管であり,その周囲に膵腺房細胞を認め,Heinrich II型異所性膵と診断した.上行結腸間膜内に発生した異所性膵の本邦での報告は本例を除き1例のみであり,繰り返す腹痛の原因となった上行結腸間膜内異所性膵について,文献的考察を加え報告する.

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© 2014 日本臨床外科学会
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