日本臨床外科学会雑誌
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症例
散弾銃による胸腹部損傷の1例
加藤 暢介増田 良太西海 昇加賀 基知三猪口 貞樹岩崎 正之
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キーワード: 銃創, 血中鉛, 待機手術
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2015 年 76 巻 1 号 p. 146-149

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抄録

散弾銃損傷に対し,重症度から腹部の緊急手術と胸部の待機手術に分けて施行し良好な経過を得た症例を経験した.症例は60歳の男性.キジ狩り中に誤射を受け被弾した.胸部単純X線写真で左側胸腹部に計39個の散弾を確認した.胸部CT写真は銃弾の軌道に沿った左肺挫創と左血気胸を認めた.左胸腔ドレーン挿入時に一過性の気瘻と100mlの血性排液を認め,消化管損傷の可能性を優先し,緊急試験開腹手術を施行した.胸部37個の弾丸のうち合計23個が残ったが,血中鉛濃度の上昇を認めたため,18病日に肺内,心嚢内,左胸部皮下脂肪層・筋層内の銃弾を摘出した.血中鉛濃度は17病日に12.0ug/dlまで上昇したが,以後下降し受傷1カ月後は9.9ug/dlとなり,以後低値となった.散弾銃は,銃創による臓器損傷と体内遺残散弾による鉛中毒に注意が必要である.出血や重篤な臓器損傷がなければ鉛中毒予防のため散弾除去は待機手術で良い.

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