2015 年 76 巻 1 号 p. 74-78
症例は79歳,男性.2013年10月に左下肢痛が出現し,その後,背部痛を自覚したため,当院へ救急搬送された.その後,体動困難になり精査目的に整形外科に入院した.入院3日目の腹部CTでは,後腹膜腔に膿瘍形成があり,同側の腸骨筋から脊柱起立筋筋膜表面へと連続する広範な気腫を認めた.膿瘍形成部の下行結腸には,以前より虚血性腸炎を指摘されていたため,下行結腸虚血性腸炎の後腹膜穿孔による後腹膜膿瘍および気腫を疑った.まず,経皮的にドレナージチューブを留置したが改善なく,入院5日目に試験開腹を施行した.開腹所見では腹腔内に汚染腹水や膿瘍は認めず,下行結腸切除および下行結腸ストマ造設を施行した.摘出標本では切除された下行結腸に小穿孔を認め,組織所見では,悪性所見は認めなかった.術後はICUでの全身重症管理および計2回の経皮ドレナージ・入れ替えを要したが,保存的に軽快し,術後55日目に退院した.