抄録
遺残虫垂癌は,非常に稀な疾患であり,本邦における報告は,検索しえた限りでは13例のみであった.今回,虫垂切除術後12年で発症した遺残虫垂癌で,腺内分泌細胞癌が極めて疑われた1例を経験したので報告する.症例は51歳,男性.12年前に虫垂切除術を施行された既往がある.検診にて便潜血反応陽性を指摘されたため,近医を受診し,大腸内視鏡検査を施行された.遺残虫垂癌が疑われ,当科紹介となった.腫瘍は小腸および小腸間膜へ浸潤しており,右半結腸切除術を施行した.肉眼的に,粘膜面は比較的保たれており,腫瘍は粘膜下腫瘍様に虫垂開口部方向へ粘膜を押し上げるように存在していた.免疫染色(chromogranin A,synaptophysin,NSE)は陰性であったがH.E.染色にて内分泌細胞癌が極めて疑われた.上皮性腫瘍が筋層内に発生していることと,肉眼的所見をあわせて,遺残虫垂癌の診断に至った.