日本臨床外科学会雑誌
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症例
経皮経肝的静脈瘤塞栓術が奏効した人工肛門静脈瘤出血の1例
寺井 志郎寺田 逸郎新保 敏史山本 精一加治 正英清水 康一望月 健太郎
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2015 年 76 巻 1 号 p. 79-84

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抄録

症例は49歳,女性.多発肝転移・肺転移・腹膜転移を伴ったS状結腸癌に対してS状結腸切除術・人工肛門造設術を施行後,化学療法を継続されていた.術後9カ月時に人工肛門からの出血に伴う出血性ショックを合併し,腹部造影CT検査にて人工肛門静脈瘤出血と診断された.止血に難渋し,保存的加療は困難であり,静脈瘤塞栓術の適応と判断した.経皮経肝的門脈造影では,下腸間膜静脈から流入し,左浅腹壁静脈へ流出する静脈瘤が確認されたため,流出静脈を塞栓後,バルーン閉塞下に静脈瘤も塞栓した.塞栓後は速やかに止血が得られ,塞栓後第5病日に退院となり,早期に化学療法の再開が可能となった.人工肛門静脈瘤は門脈圧亢進症を呈した人工肛門造設患者にみられる比較的まれな合併症である.われわれは出血コントロール困難な人工肛門静脈瘤出血に対して,経皮経肝的静脈瘤塞栓術が奏効した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

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© 2015 日本臨床外科学会
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