日本臨床外科学会雑誌
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症例
肺癌との鑑別が困難であった肺炎症性偽腫瘍の1例
下村 雅律石原 駿太藤原 郁也岡山 徳成永田 啓明多加喜 航
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2015 年 76 巻 11 号 p. 2669-2673

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抄録

68歳,女性.2011年5月に交通事故で当院を受診し,その際の胸部CTにて左肺S10領域に径7mmの小結節を認めた.徐々に増大傾向であり,気管支鏡および経皮的針生検を施行したが確定診断に至らなかった.2014年4月に手術目的で当科紹介となる.
CTで径46mmの腫瘤性病変を左肺S10に認めた.FDG-PETでは同部位に一致した集積が見られた.原発性肺癌の可能性が否定できないため,胸腔鏡補助下左肺下葉切除術を行った.術中迅速診断では,形質細胞とリンパ球の高度の浸潤が見られたが悪性所見は認めなかった.病理組織診断により炎症性偽腫瘍と診断された.肺炎症性偽腫瘍は多くの場合術前診断が困難であり,外科的切除により初めて診断可能となることが少なくない.今回,3年間の経過観察により増大し,悪性腫瘍との鑑別が困難であった肺炎症性偽腫瘍の1切除例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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