抄録
Gastrointestinal stromal tumor(以下,GIST)はvon Recklinghausen病や遺伝性病変以外の散発性GISTの多発例はまれである.われわれは,胃GIST術後9年目に切除した十二指腸GISTの1例を経験したので報告する.症例は75歳の女性で,66歳時に胃GISTで幽門保存胃切除術施行し経過観察中であった.経過観察CTで十二指腸水平脚に径20mmの腫瘤を認め,ボーリング生検でGISTと診断し,十二指腸楔状切除術を施行した.胃と十二指腸標本の免疫組織染色でCD34とαSMAの染色性が異なること,c-kit遺伝子exon11変異部位が異なることから,遺伝性背景のない多発性散発性GISTと診断した.十二指腸GISTは超低リスクであり経過観察の方針とした.GISTは多臓器に多発する可能性も念頭に置き経過観察する必要がある.