関東東山病害虫研究会報
Online ISSN : 1884-2879
Print ISSN : 1347-1899
ISSN-L : 1347-1899
イネ・ムギの虫害
イチモンジセセリ幼虫に対するBT水和剤の散布適期
石崎 摩美石島 力三浦 重典
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 2018 巻 65 号 p. 65-69

詳細
抄録

水稲の晩植栽培ではイチモンジセセリ幼虫の発生が増加することがあり,特に有機水稲など化学合成農薬を使用しない栽培体系では本種による葉の食害が問題となり得る。そこで,微生物農薬であるBT水和剤について散布適期の検討を行った。6月上旬移植の試験圃場において,幼虫齢期が異なる時期にBT水和剤を散布した結果,いずれの時期であっても散布後は幼虫がほとんど見られなくなった。次に,本種が甚発生した6月中旬移植の現地圃場で2000倍希釈のBT水和剤を散布したところ,主に中齢~老齢幼虫が発生している時期であっても散布7日後には幼虫密度は散布前の2.7%に減少した。さらに室内試験において,幼虫齢期3段階(3齢,4齢,5齢)を対象に,2段階(2000倍,4000倍)の希釈倍率のBT水和剤に浸漬したイネ葉を用いた摂食試験を行った結果, いずれの齢期の幼虫も接種後72時間以内に全て死亡し,高い殺虫効果が認められた。これらの結果から,BT水和剤は若齢幼虫と同様に中老齢幼虫に対する効果もあることが示唆され,防除時期を若齢発生時期よりも遅い時期まで広げられる可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2018 関東東山病害虫研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top