抄録
患者は29歳の女性で,臍周囲の痛みを訴えて受診した.腹部造影CTにて腸重積の診断となった.注腸検査で重積を整復し,Bauhin弁の対側に約3cm大の腫瘍性病変を認めた.翌日に腸重積が再燃し,また,盲腸に腫瘍性病変の存在が疑われるため手術適応と判断した.腹腔鏡手術を施行し,漿膜側からの観察および鉗子による触診では腫瘍性病変は明らかではなかったが,回盲部切除術を施行した.病理所見では,器質的疾患を認めず,成人特発性腸重積の診断となった.本症例は,二期的な手術も考慮して観察のみに留め,術後に下部消化管内視鏡を行うことで器質的病変を否定して腸切除を回避することができる症例であった.