抄録
現在本邦では,切除不能な体表部悪性腫瘍による滲出液・出血・悪臭・疼痛といった症状に対する緩和治療としてMohs法が行われている.今回われわれは,直腸癌の会陰浸潤巣から起きた出血に対してMohs法を施行した.患者は63歳の男性で,2010年11月に直腸癌に対して腹会陰式直腸切断術を施行したが半年後に骨盤内再発し,放射線化学療法を行うも徐々に増大して次第に腫瘍が会陰浸潤し体表に露出するようになった.2013年7月に腫瘍表面から出血するようになり,貧血が進行したため輸血を行ったが2日後に再び出血し輸血を要した.今後も繰り返すことが予想されMohs法を行ったところ速やかに止血が得られ,その後も治療を継続し原病死されるまでの約4カ月間再出血することはなかった.Mohs法は皮膚癌や乳癌への使用報告例が多いが,自験例のような内臓癌の皮膚浸潤・転移巣に対しても安全かつ効果的であった.