抄録
症例は89歳,男性.発熱,食思不振,呼吸苦を主訴に当院を受診した.来院時は,38.0℃の発熱を認め,腹部CT検査で,腹腔内膿瘍を伴う急性虫垂炎と診断され,虫垂切除術を施行した.病理組織学的検査で壊疽性虫垂炎と粘膜下に陳旧性の日本住血吸虫卵を認めた.術後経過良好で第10病日に退院となった.日本住血吸虫症は中間宿主である宮入貝の撲滅に伴い,1978年を最後に国内での新たな感染者は報告されていない.病理組織検体に日本住地吸虫卵が認められた場合は流行地出身者などの陳旧性症例であり,報告例も減少し,高齢層へ移行している.しかし,日本住血吸虫症の国外感染による輸入症例の報告もあり,活動性感染の可能性も念頭に置くべきと考えられた.