2015 年 76 巻 4 号 p. 789-792
症例は81歳,男性.貧血の精査目的に入院した際に施行した腹部CTで小腸に接する40mm大の腫瘤を指摘された.小腸透視では中部小腸に粘膜下腫瘍様の隆起を認め,圧迫像で腫瘤近傍の小腸を壁外から圧排する像が認められた.壁外に発育した小腸GISTの術前診断で腹腔鏡補助下小腸切除術を行うこととした.術中所見では腸間膜内に術前に指摘された腫瘤を認め,近傍の小腸に別の腫瘍性病変を触知した.腸間膜リンパ節転移を伴う小腸腫瘍と診断し腹腔鏡補助下小腸切除術,所属リンパ節郭清を施行した.病理診断は腸間膜内リンパ節転移を伴う14mmの小腸カルチノイドであった.
小腸カルチノイドは,自験例のようにリンパ節転移を契機として発見される症例が多く報告されている.過去の文献でもリンパ節転移を高頻度に認めると報告されており,遠隔転移を認めない症例に対しては,リンパ節郭清を含めた外科的根治術を施行することが望ましいと考えられた.