日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
76 巻 , 4 号
選択された号の論文の51件中1~50を表示しています
原著
  • 片岡 雅章, 吉岡 茂, 塩原 正之, 若月 一雄, 新井 周華, 須田 浩介, 宮澤 康太郎, 三好 哲太郎, 太枝 良夫
    2015 年 76 巻 4 号 p. 671-676
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    目的:膵頭十二指腸切除術(PD)後の栄養状態の変化を,術後脂肪肝発症と再発の有無で検討した.方法:PD後34例を対象とし,術後脂肪肝発症の有無で脂肪肝群と非脂肪肝群に分類した.アルブミン,総タンパク値のほかに,CTで大腰筋面積を測定した.結果:中央値12カ月の観察期間でPD後脂肪肝は8例(23.5%)認めた.両群間で原疾患の再発率,術前・術中・術後因子に差はなかった.アルブミン,総タンパクは非脂肪肝群でPD前後に有意差はないが,脂肪肝群で低下を認めた.大腰筋面積は両群とも術後に減少したが,脂肪肝群でより減少を認めた.再発の有無では,再発ない症例はPD前後で大腰筋面積に差を認めず,再発ある症例では有意に低下した.結語:PD後の術後脂肪肝症例や再発症例では筋肉量減少など栄養障害が認められ,QOLや予後の改善のために積極的な栄養サポートを行うことは重要と考えられた.
症例
  • 後藤 晃紀, 長嶺 弘太郎, 亀田 久仁郎, 鈴木 紳祐, 久保 章, 竹川 義則
    2015 年 76 巻 4 号 p. 677-683
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    血管肉腫は稀な疾患で,消化管に転移することは極めて珍しい.今回われわれは,消化管穿孔を契機に発見された血管肉腫の1例を経験したので報告する.症例は83歳の男性で,上腹部痛を主訴に当院を受診.精査で消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断し緊急開腹手術を施行した.開腹するとTreitz靱帯近傍の空腸に径2cm大の腫瘍を認め,その中心が穿孔していた.同様の腫瘍を胃・小腸・下行結腸にも認め,各部を切除し再建を行った.切除標本の粘膜面はいずれも2型腫瘍様の形態で,褐色隆起の中心に壊死性潰瘍を伴っていた.免疫染色で第VIII因子・CD31・CD34で陽性を示すことから病理組織学的に血管肉腫と診断した.術後消化管出血とイレウスを併発し,術後第47病日に肺炎による呼吸不全で死亡し,剖検では肺両葉と肝臓に転移を認めた.2年前から認められていた前額部皮疹の生検を術後に行ったところ血管肉腫の診断を得たことから,前額部皮膚原発血管肉腫の全身転移と考えられた.
  • 小川 信, 下之薗 将貴, 又木 雄弘, 實 操二, 牧角 寛郎, 夏越 祥次
    2015 年 76 巻 4 号 p. 684-687
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    輪状甲状靱帯切開は,外傷医療や挿管困難症例における外科的気道確保のために行われることが多いが,頭頸部癌による呼吸不全に対して輪状甲状靱帯切開が奏効した2例を経験したので報告する.症例1は59歳の男性.咽頭癌の局所再発巣から急激な大量出血による誤嚥で呼吸不全となったため,気管挿管を行った.頸部リンパ節転移が前頸部から輪状甲状靱帯尾側の皮膚まで浸潤していたため気管切開は危険と判断し,輪状甲状靱帯切開を施行した.退院後は在宅にて最期まで過ごされた.症例2は70歳の男性.甲状腺未分化癌の気管浸潤のため呼吸不全となり,経鼻気管挿管され鎮静下で人工呼吸器管理となった.輪状甲状靱帯切開術を施行し人工呼吸器から離脱できた.在宅診療を目指していたが,次第に悪液質が進行し病院で永眠された.自験例のように気管切開の時期を逸した場合も,輪状甲状靱帯切開を緩和医療として施行し呼吸状態の安定化が得られると考えられた.
  • 洲崎 聡, 柳橋 健, 橘 強, 濱田 新七
    2015 年 76 巻 4 号 p. 688-692
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,閉経前女性.企業健診の乳腺超音波検査で異常を指摘され,精査目的に当科受診.右乳房内側下部に分葉状腫瘤性病変を認め,経過観察を行った.2年6カ月後,マンモグラフィに構築の乱れが出現した.針生検では異型小葉を認めるのみで診断に至らず,切開生検を行った.組織診断は管状癌で,近傍に円柱状細胞と,非浸潤性小葉癌を認めた.病理学的に,乳腺管状癌と円柱状細胞,非浸潤性小葉癌の三徴が併存する所見を,Rosen triadと提唱されている.本症例はRosen triadを呈する乳腺管状癌と診断された.乳癌検診にマンモグラフィが導入され,低悪性度乳癌症例の発見が増加し病理診断がより困難となっているが,これら三徴の存在が管状癌の確定診断の根拠となり得る.確定診断がつくことにより,臨床的に治療方針の決定や予後予想が可能となるため,Rosen triadを認識していることは有用である.
  • 中野 芳明, 西 敏夫, 西前 綾香, 山崎 大, 吉田 哲也, 稲治 英生
    2015 年 76 巻 4 号 p. 693-698
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,女性.2010年12月に右乳房腫瘤を指摘されていたが良性として放置されていた.2011年5月,腫瘤が急速に増大してきたため当院を受診した.右乳房に9.0×7.0cmの腫瘤を認めた.針生検にて境界病変の葉状腫瘍と診断し,右乳房切除術と腋窩リンパ節のサンプリングを行った.病理組織学的検索では,境界病変の葉状腫瘍内に非浸潤性乳管癌(以下DCIS)と非浸潤性小葉癌(以下LCIS)が併存していた.術後追加治療を行うことなく経過観察中であるが,術後3年6カ月経過した現在,再発の徴候を認めていない.葉状腫瘍に乳癌が併存した症例は稀であり,殊に本症例のように異なった組織型の乳癌を複数併存した症例について我が国では皆無である.葉状腫瘍内の乳癌発生は稀であり,偶然の併発と考えるのが妥当と思われるが,腫瘍が巨大なことが多いため併存病変の可能性を考え多数切片病理検索が望ましいと考えられた.
  • 岡野 高久, 藤原 克次, 夜久 均
    2015 年 76 巻 4 号 p. 699-703
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性.胸痛を自覚するも放置,4日後に再び胸痛が出現し心源性ショックで救急搬入となった.緊急CAGで左冠動脈回旋枝(#13)の完全閉塞を認め,心エコーで非薄化した左室後側壁と多量の心嚢液貯留を認めた.急性心筋梗塞およびoozing型心破裂による心タンポナーデと診断した.発症から数日経過しており再灌流障害を危惧しPCIは行わず,心タンポナーデに対して直ちに心嚢ドレナージを行った.急性期を保存的治療のみで乗り切ることができたが,3カ月後の心エコーで左室後側壁に径30mm大の左室仮性瘤を認めた.破裂の危険を危惧し,可及的早期に左室形成術および冠動脈バイパス術を行った.仮性瘤は比較的強固に周囲と癒着し瘤内に血栓を認めた.Oozing型左室破裂症例では,急性期治療のみだけでなく慢性期の心室仮性瘤も念頭に心エコーによる慎重な経過観察を行い,仮性瘤発生時には可及的早期に手術することが肝要である.
  • 矢田 圭吾, 石橋 広樹, 森 大樹, 島田 光生
    2015 年 76 巻 4 号 p. 704-708
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    4歳,男児.胎児期より上縦隔腫瘍を指摘されていたが,縮小傾向を認めないために手術を行う方針とした.術前画像検査では,異常動脈は明らかではなく,縦隔腫瘍と先天性嚢胞性肺疾患との鑑別が困難であったことから,胸腔鏡下手術を行う方針とした.胸腔鏡所見では,上縦隔に位置する虚脱した肺組織様の病変は2mm径の異常動脈を伴う肺葉外肺分画症であり,胸腔鏡下摘出を行った.肺分画症の診断には異常血管の同定が必要だが,術前画像所見でははっきりせず,縦隔腫瘍等と術前診断されることが多く報告されており,また近年,小児先天性嚢胞性肺疾患に対する胸腔鏡下手術の有用性が報告されている.本症例のように,異常動脈が細く術前診断が困難である肺葉外肺分画症症例には,胸腔鏡下観察および胸腔鏡下摘出が有用であると考えられた.
  • 角岡 信男, 平山 杏, 松田 史雄, 稲沢 慶太郎
    2015 年 76 巻 4 号 p. 709-713
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性,糖尿病・肺結核などの既往を認め,喫煙指数は1,200.以前より右肺上葉を占める肺嚢胞を指摘されており,平成25年8月の胸部CTでは嚢胞内に腫瘤を認めなかった.しかし,同12月に胸部X線にて嚢胞内に腫瘤を指摘された.CTでは右上葉の肺嚢胞内部に34×32mmの腫瘤を認め,PET-CTではSUV max 25の高い集積を認めたが,気管支鏡下生検ではClass Iであった.採血ではCEA,CYFRA,アスペルギルス抗原は陰性.腫瘤は増大傾向を呈しており,胸腔鏡下手術を施行した.強固な癒着を剥離し針生検を行うも壊死組織のみで診断に至らず,右肺上葉切除を施行した.迅速病理診断では肺癌の診断にて,縦隔リンパ節郭清を追加した.術後病理では扁平上皮癌,pT2aN0M0 pStage IBであった.肺嚢胞内に4カ月間と短期間で急速に発生した肺癌症例は稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 松村 英樹, 田村 孝史, 久倉 勝治, 寺島 秀夫, 大河内 信弘
    2015 年 76 巻 4 号 p. 714-719
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例1は58歳,女性.苛性ソーダを服用した後に,咽頭の完全閉鎖が形成された.食道の炎症は強く,胃は鉛管状に変形していたため,服用から4カ月後に,下咽頭喉頭頸部食道摘出・咽頭回腸吻合術を施行した.症例2は24歳,女性.苛性ソーダを服用した後に,内視鏡拡張術抵抗性の食道狭窄が形成された.胸部食道周囲の炎症は軽度であり,頸部食道は炎症を認めなかったため,服用から1年3カ月後に右開胸食道亜全摘・胃管再建術を施行した.症例3は63歳,男性.アルカリ洗剤を服用した後に,喉頭蓋の癒着・食道狭窄が形成された.食道周囲の炎症は軽度であったため,服用から5年後に下咽頭喉頭摘出・非開胸食道抜去・咽頭胃管吻合術を施行した.手術までの時期の異なる腐食性食道炎3例を経験し,いずれも良好な経過を得たので報告する.
  • 栂野 真吾, 久保 尚士, 櫻井 克宣, 豊川 貴弘, 大平 雅一, 平川 弘聖
    2015 年 76 巻 4 号 p. 720-725
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.胸部CT検査にて,上縦隔に長径60mm大の軟部陰影を指摘された.上部消化管内視鏡検査では,門歯より25cmの胸部上部食道に粘膜下腫瘍を認めた.超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA:Endoscopic Ultrasound-Fine Needle Aspiration Biopsy)を施行したところ,好酸性の紡錘形細胞の増殖を認め,免疫組織染色にてGIST(Gastrointestinal Stromal Tumor)が強く疑われた.FDG-PET検査では同部にSUVmax値が9.9と高集積を認めた.食道悪性GISTを含めた粘膜下腫瘍と診断し,開胸食道亜全摘・胸骨後経路胃管再建術を施行した.切除標本の免疫染色ではdesmin(-),αSMA(-),S-100(+),CD34(-),KIT(-),DOG1(-),Ki-67<1%であり,食道神経鞘腫と診断された.
    食道粘膜下腫瘍では平滑筋腫が最も多く,神経鞘腫は比較的稀である.また,FDG-PET検査が施行された食道神経鞘腫の報告は少なく,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 佐藤 雄介, 坪井 賢治, 川瀬 義久, 大河内 治, 宇野 泰朗
    2015 年 76 巻 4 号 p. 726-731
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    比較的稀な食道神経鞘腫の1例を経験したので報告する.症例は60歳の男性.心窩部痛を主訴に近医受診し,上部消化管造影にて食道の陰影欠損を指摘され当院紹介受診となった.上部消化管内視鏡検査では下部食道に表面平滑な粘膜下腫瘍を認めた.胸部CTでは下部食道に85×50mmの造影効果を伴わない腫瘤を認めた.確定診断のためEUS-FNAを勧めたが同意を得られず,食道粘膜下腫瘍の診断にて手術を施行した.下部食道に10cm大の腫瘍を認め,周囲への浸潤は認めなかったが,腫瘍核出は困難であり下部食道切除を行った.切除標本は100×58×65mmの腫瘍で,割面は黄白色調の充実性腫瘤であった.組織学的には紡錘形細胞が錯綜性に増殖し,免疫染色ではS-100蛋白は陽性,SMA・c-kit・CD34は陰性で神経鞘腫と診断された.食道神経鞘腫は稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 問山 裕二, 大井 正貴, 志村 匡信, 安田 裕美, 毛利 靖彦, 楠 正人
    2015 年 76 巻 4 号 p. 732-737
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.コンクリート破砕作業中に,器械の刃が破損して前頸部を受傷した.両側反回神経損傷を伴う外傷性気管食道断裂に対して緊急手術を施行した.気管および食道壁は挫滅により色調不良を認め,一期的再建は誤嚥や縫合不全のリスクが高いと考え,喉頭気管分離術(気管皮膚瘻+唾液瘻+食道瘻造設)ならびに胃瘻造設術を施行した.唾液瘻より経鼻胃管を挿入し唾液の持続ドレナージを行い,初回手術より43日後に消化管再建を行った.咽喉頭摘出後に上部空腸を遊離空腸グラフトとして用い,空腸動脈と上甲状腺動脈,空腸静脈と右内頸静脈の血管吻合を加えて遊離空腸再建を行った.術後経過は良好で,全粥食が摂取可能となり再建術後第38病日に退院となった.今回,計画的に二期的消化管再建を行った外傷性完全気管食道断裂の1例を経験したので報告する.
  • 山名 大輔, 稲葉 行男, 滝口 純, 佐藤 清, 林 健一
    2015 年 76 巻 4 号 p. 738-742
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は50歳台,男性.平成26年7月に薪割りの作業を行っていた.同僚が4mほど離れた位置で金属製の楔を薪に打ち込んでいたところ,楔の一部が欠けて患者の左側腹部に飛来した.皮膚には5mmほどの刺創を認め,創部痛を主訴に当院救急外来を受診した.腹膜刺激症状なく,全身状態は安定していた.受傷現場に金属片を確認できなかったため,画像検査を施行した.腹部レントゲン検査にて経時的に移動する異物を,CTにて腹腔内遊離ガス像と十二指腸下行脚にアーチファクトを伴う異物を同定した.腹壁を穿通した異物による胃穿孔と診断し,緊急手術を施行した.腹腔内は少量の血性腹水と胃体中部大弯後壁の穿孔を認めたが,周囲臓器に損傷はなかった.穿孔部位は縫合閉鎖し,異物は術中透視で位置を確認し空腸を小開窓して摘出した.緊急手術を施行した腹部穿通性外傷および胃穿孔の症例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 小林 亮介, 山本 宏, 貝沼 修, 趙 明浩, 鍋谷 圭宏, 伊丹 真紀子
    2015 年 76 巻 4 号 p. 743-748
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は33歳,男性.労作時のめまい・動悸を自覚し,近医受診しHb 7.3g/dlと貧血を指摘された.十二指腸水平部に2型腫瘍を認め,十二指腸癌の診断で,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織診断では,小円形細胞の増殖を認め,免疫染色では,MIC2,NSE陽性で,筋原性マーカーや上皮性マーカーは陰性であった.さらに,Ewing肉腫と同じ染色体転座も認め,末梢性未分化神経外胚葉性腫瘍peripheral primitive neuroectodermal tumor(pPNET)と診断した.術後は化学療法を行い,現在術後4年無再発生存中である.pPNETは四肢や胸壁などに発生する軟部腫瘍で,近年,Ewing肉腫と共通した染色体転座を有することが判明し,Ewing肉腫ファミリー腫瘍と総称される.腸管原発の発生は非常に稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 安齋 実
    2015 年 76 巻 4 号 p. 749-752
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.15年前に胃潰瘍のため幽門側胃切除(Billroth-II法再建)の既往がある.検診で残胃噴門部小弯に内腔発育型の胃粘膜下腫瘍を指摘され,超音波内視鏡下細胞診でGISTの診断となり手術の方針となった.低侵襲性,機能温存を考慮し,腹腔鏡・内視鏡合同手術(laparoscopic endoscopic cooperative surgery:LECS)による胃局所切除を行った.欠損部は腹腔鏡下に支持糸をかけ,自動縫合器を用いて閉鎖した.手術時間は288分,出血量は153mlであった.術後経過良好にて第11病日に退院した.
    従来であれば,開腹による残胃全摘を行う症例に対しても,LECSを行うことで,低侵襲性,機能温存,根治性を両立することが可能であった.
  • 下村 知雄, 榊原 孝至, 中路 太門, 今冨 翔士
    2015 年 76 巻 4 号 p. 753-756
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は89歳,女性.主訴は食後の嘔吐.内視鏡検査にて胃前庭部大弯に基部を有する巨大なpolypoid lesionを認め,十二指腸に脱出していた.生検の結果はtubular adenocarcinoma,well differentiatedであった.Scope にて腫瘍を胃内へ還納できるも,基部の視野を十分確保できないため内視鏡治療を断念し,幽門側胃切除・Billroth I法再建術を施行した.術後経過は概ね良好にて術後26日目に退院し,現在外来フォロー中である.胃の腫瘍性病変が十二指腸に脱出し,幽門閉塞をきたす病態はball valve syndrome と言われるが,今回われわれは,早期胃癌によるその1切除例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 河野 眞吾, 小林 昭広, 芝崎 秀儒, 木下 敬弘, 齋藤 典男
    2015 年 76 巻 4 号 p. 757-761
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性.2002年11月に検診で発見された胃癌に対し幽門側胃切除術を施行した.病理所見はtype0-IIc+IIa,37×27mm,por1,pT1b,INFa,ly3,v1,N2,pStage IIAであった.術後補助療法は施行せず,経過観察中であった.2003年2月より,ふらつき・頭痛が出現し精査施行したところ,右小脳に3.0cm大の転移性脳腫瘍を指摘.脳内の他部位に転移巣を認めず,肝肺局所に再発所見は認めなかった.右小脳転移性脳腫瘍に対し開頭腫瘍摘出術を施行.術後経過は良好であり,現在術後10年以上無再発生存している.胃癌からの脳転移は,全身に転移が認められた後の末期的な状態として発見される場合が多く,今回の症例のように孤立性に転移をきたすことは稀である.今回,われわれは胃癌術後に発症した孤立性小脳転移に対し加療により良好な予後を得られた1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 中谷 充宏, 辰巳 満俊, 中出 裕士, 小川 護仁
    2015 年 76 巻 4 号 p. 762-767
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.10年前に胃癌に対し幽門側胃切除術が施行された.2年前に胃癌再発による多発骨転移を指摘され,S-1療法が開始された.食思不振と全身倦怠を主訴に外来受診し入院となった.精査で心嚢液貯留による心タンポナーデ,右心不全と診断され,エコーガイド下心嚢液ドレナージ術が施行された.排液は血性であり,細胞診はclass Vであった.チューブドレナージのみで症状は軽快し,チューブ抜去後も心嚢液の再貯留は認めず退院となった.退院後は化学療法を行わないことを希望されたが心嚢液の貯留を認めることなく経過し,心タンポナーデ発症後約12カ月目に永眠された.癌性心膜炎による心タンポナーデはoncologic emergencyとして緊急処置を要する疾患であるが,胃癌の術後再発として発症することは稀である.軽微な症状を主訴とする場合もあり,担癌患者に対しては常に念頭に置くべき疾患であると考えられた.
  • 水藤 広, 吉村 清司, 尾崎 正彦, 大島 郁也, 角田 幸雄, 松原 久裕
    2015 年 76 巻 4 号 p. 768-773
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性で,49歳時に10cm大の膵腫瘍の診断で膵頭十二指腸切除を施行された.2011年8月,腹部超音波で肝S4に92×71mmの境界明瞭,内部不均一な腫瘤を認めた.CTでは,早期相で内部と辺縁に強い造影効果を認め,後期相では低吸収域であった.11年前に膵腫瘍で手術を施行していたため,標本を再検し,c-kit陽性を確認した.前回手術の診断はsolid-pseudopapillary tumorから十二指腸GISTに変更となった.十二指腸GIST術後11年目の肝転移再発の診断で肝S4部分切除を施行した.腫瘍は8×7cm,免疫染色で,c-kit(+),CD34(+)であり,GISTの肝転移と診断された.
  • 野村 尚弘, 富家 由美, 柴田 有宏, 高瀬 恒信, 丸山 浩高, 矢口 豊久
    2015 年 76 巻 4 号 p. 774-779
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.左側腹部痛を主訴に当院受診.腹部造影CTにて上部空腸の全周性の壁肥厚と造影不良を認め,虚血性腸炎の疑いで入院.保存的治療を行うも,CTにて空腸の壁肥厚と虚血性変化が増強,リンパ節腫大も認めた.上部消化管内視鏡にて,十二指腸上行部に潰瘍性病変,空腸起始部に全周性の潰瘍を認めた.生検にて小型単核球様異型リンパ球がびまん性に浸潤,免疫染色でCD3+,CD8+,CD20-,CD56+で,腸管症型T細胞リンパ腫II型と診断.腸管穿孔のリスクを考慮し,化学療法に先行して手術を施行した.Treitz靱帯近傍の空腸に漿膜まで浸潤する腫瘍を認め,さらに肛門側の空腸に浸潤し一塊となっており,十二指腸水平脚から空腸までを切除した.残存小腸にも回腸末端まで多発する腫瘤を触知した.術後はTHP-COP療法を施行したが,術後3カ月で死亡した.
  • 澤木 康一, 越川 克己, 米山 哲司, 田中 晴祥, 福岡 伴樹, 佐野 正明
    2015 年 76 巻 4 号 p. 780-784
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    長期透析患者の透析アミロイドーシスによる小腸穿孔の1例を経験した.症例は62歳の男性で,30歳時に血液透析導入された.47歳時に左手根幹症候群に対して左手根幹開放術を施行され,その後も,骨関節障害に対して複数回の手術を施行されていた.発熱・腹痛を主訴に当院を受診され,腹部CT検査で回腸に限局的な壁肥厚と腸間膜脂肪識の濃度上昇を認めた.また,肥厚した腸管壁に一部欠損がみられ,壁外にガス像が連続していた.以上より,小腸穿孔と診断し緊急開腹術を施行した.回腸に穿孔部を1箇所認め,穿孔部を含めて小腸を部分切除し,一期的に機能的端々吻合を行った.病理組織学的に穿孔部周囲の粘膜下層と血管周囲にアミロイドの沈着を認めた.術後,嘔吐と難治性下痢を認めたが,術後52病日で転院された.経過中に縫合不全を示唆する所見は認めなかった.
  • 藤井 昌志, 山中 直樹, 萱島 理, 亀岡 宣久, 横畑 和紀, 的場 直行
    2015 年 76 巻 4 号 p. 785-788
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    Henoch-Schönlein紫斑病(HSP)の治療中に空腸動脈出血をきたした1例を経験したので報告する.症例は64歳の男性で,胃全摘術後であり,癒着性イレウスによる入退院を繰り返している.2013年11月にHSPを発症し,ステロイド投与を開始された.12月下旬に腹痛が出現,ショック状態となり,Hb:5.3g/dlと貧血の進行と造影CTで空腸動脈から活動性の出血を認めた.血管造影による止血を試みたが困難であり,緊急手術となった.腹腔内には左上腹部を中心に約500gの血腫を認めたが,癒着のために限局していた.空腸腸間膜内に動脈が破綻しており,活動性の出血を認め,同部を結紮切離した.術後経過は良好でHSPの治療のため,再度内科に転科となった.HSPの治療中に腹腔内出血をきたした例は極めてまれで,致命的になりうるが,腹腔内の癒着により救命しえた1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 森松 克哉, 空閑 啓高, 品川 裕治, 堤 宣翁
    2015 年 76 巻 4 号 p. 789-792
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,男性.貧血の精査目的に入院した際に施行した腹部CTで小腸に接する40mm大の腫瘤を指摘された.小腸透視では中部小腸に粘膜下腫瘍様の隆起を認め,圧迫像で腫瘤近傍の小腸を壁外から圧排する像が認められた.壁外に発育した小腸GISTの術前診断で腹腔鏡補助下小腸切除術を行うこととした.術中所見では腸間膜内に術前に指摘された腫瘤を認め,近傍の小腸に別の腫瘍性病変を触知した.腸間膜リンパ節転移を伴う小腸腫瘍と診断し腹腔鏡補助下小腸切除術,所属リンパ節郭清を施行した.病理診断は腸間膜内リンパ節転移を伴う14mmの小腸カルチノイドであった.
    小腸カルチノイドは,自験例のようにリンパ節転移を契機として発見される症例が多く報告されている.過去の文献でもリンパ節転移を高頻度に認めると報告されており,遠隔転移を認めない症例に対しては,リンパ節郭清を含めた外科的根治術を施行することが望ましいと考えられた.
  • 松村 宗幸, 成田 知宏, 水野 豊, 岡本 道孝
    2015 年 76 巻 4 号 p. 793-796
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.2002年に左胸部悪性末梢神経鞘腫切除術を施行.2013年2月,同部位に再発し切除術を施行したが,2013年8月に多発肺転移を指摘されている.既往にvon Recklinghausen病はない.2013年10月,腹部膨満感を主訴に来院し,腸重積による腸閉塞の診断で入院となった.腹痛はなく腸管壊死には陥っていないと考えられたため,イレウスチューブにて減圧し手術を施行した.開腹所見ではTreitz靱帯より150cmの小腸に腸重積を認め,Hutchinson手技にて整復したところ腫瘍性病変を触知し,同部位の切除を行った.摘出標本には内腔に突出した弾性軟の腫瘍を認め,病理学的検査では悪性末梢神経鞘腫であり,原発病変よりも悪性化していると考えられた.悪性末梢神経鞘腫の小腸転移が,腸重積を契機に発見された1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 竹ノ谷 隆, 平田 泰, 小林 隆, 南村 圭亮, 真船 健一, 森 正也
    2015 年 76 巻 4 号 p. 797-802
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性.発熱,下腹部痛を主訴に受診した.急性虫垂炎・腹腔内膿瘍の診断で,虫垂切除術・膿瘍ドレナージ術を施行した.術後ドレーンより膿性排液が続き,遺残膿瘍の診断で第10病日に洗浄ドレナージ術を施行したが,感染は進行し皮下膿瘍から腹壁壊死,さらにS状結腸穿通をきたし,第31病日にS状結腸切除術・回盲部切除術を施行した.抗生剤加療および局所洗浄を継続したが感染コントロールが困難を極め,腹壁欠損部より露出した回結腸吻合部が穿孔をきたし,第59病日に穿孔部閉鎖術・腹壁デブリードマンを施行した.切除した皮下組織の病理組織学的診断でアメーバ虫体が認められ,赤痢アメーバ感染と診断した.メトロニダゾール投与後,感染は消退し,肉芽による腹壁の閉鎖が得られ,第189病日に退院した.虫垂炎術後に発症し,感染コントロールに難渋したが,確定診断後の治療が著効した赤痢アメーバ感染の稀な1例を経験したので報告する.
  • 佐藤 智仁, 鈴木 正彦, 浅羽 雄太郎, 三宅 隆史, 松山 温子, 水上 泰延
    2015 年 76 巻 4 号 p. 803-808
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の女性.盲腸癌のため回盲部切除術,D3郭清を施行した.初回手術より9年後に,胸腹部CT検査で肝S6に接する3cm大の嚢胞性腫瘤を指摘したが経過観察となり,14年後には同部位の腫瘤は8cmと著明に増大し,胸腹壁・横隔膜・肝S6への浸潤を疑った.腹壁原発の悪性腫瘍を第一に考え手術を施行した.病理組織学検査では14年前に切除した盲腸癌の胸腹壁横隔膜転移と診断した.組織型は原発巣の中分化型腺癌ではなく粘液癌であった.初回手術時の盲腸癌は中分化型腺癌が主体であったが,腫瘍の深部浸潤部では粘液癌の成分も認め,さらに深達度はSEであったことから,粘液癌細胞が腹腔内に播種し,胸腹壁に再発したものと考えた.原発巣切除から再発までに9年,経過観察の上14年後に根治切除しえた症例は極めて少なく,文献的考察を加えて報告する.
  • 西山 岳芳, 丸山 修一郎, 奥本 龍夫, 大前 健一, 金谷 欣明, 横山 伸二
    2015 年 76 巻 4 号 p. 809-812
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.2013年4月より,時折,右下腹部に痛みや違和感を自覚していた.2013年10月に右下腹部痛の増悪と褐色尿を主訴に当院受診.腹部CT検査にて,盲腸と連続して102×60mm大の内部に気泡を伴う被包化された液体貯留を認めた.膿瘍形成をきたした穿孔性虫垂炎と診断し,同日緊急手術を施行.術中所見にて明らかな膿瘍は認めず,骨盤内に盲腸から連続する手拳大の腫瘤を認めた.虫垂粘液嚢腫と診断し,術式を回盲部切除とした.術後病理組織診断にてLow-grade appendiceal mucinous neoplasmと診断された.虫垂粘液嚢腫の成因は虫垂根部の無菌性閉塞であるため,本来,腫瘤内に気腫は認めないはずである.自験例では腫瘤内に気腫を有し,膿瘍形成をきたした穿孔性虫垂炎と術前診断されたが,術中所見にて虫垂粘液嚢腫と診断し,術式を回盲部切除とすることにより根治切除としえた.
  • 馬場 卓也, 梅枝 覚, 野地 みどり, 山本 隆行, 湯澤 浩之, 中山 茂樹
    2015 年 76 巻 4 号 p. 813-816
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,女性.検診で上部消化管造影検査を施行した.翌日,腹痛を主訴に当院を受診された.腹部単純X線とCTにてS状結腸に多量のバリウム貯留像を認めた.明らかな腹水,free airなどの所見は認めなかった.緊急下部消化管内視鏡検査を施行,S状結腸まで到達するもバリウム塊は陥頓していた.腹痛が増強し腸管穿孔も懸念されたため緊急手術を行った.S状結腸でバリウム塊が露出していたため,これを摘出すると3cmの穿孔を認めた.Hartmann手術と腹腔内洗浄・ドレナージ術を施行した.術後ストマ近傍に感染性血腫を発症し経皮的ドレナージを要したが,DICなど大腸穿孔に見られる重篤な全身状態には至らなかった.大腸穿孔は憩室や腫瘍など既存の疾患が関与する場合が多く,バリウムにより穿孔する報告例は少ない.集団検診時の上部消化管造影検査におけるバリウムの停滞で大腸穿孔を発症した症例を経験したので報告する.
  • 濵崎 俊輔, 村田 祐二郎, 坂東 道哉, 森 正樹, 佐藤 裕二
    2015 年 76 巻 4 号 p. 817-821
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は42歳の女性,全身性エリテマトーデスに対しプレドニゾロン20mg内服中であった.下腹部痛と下血を主訴に受診し出血性腸炎の診断で入院となった.第2病日,下部消化管内視鏡で横行結腸に縦走潰瘍と浮腫を認め,内視鏡上虚血性腸炎と診断した.第3病日,腹膜刺激徴候を伴う腹部症状の増悪と全身性炎症反応症候群,血圧低下を呈し,壊死型虚血性腸炎による腹膜炎,敗血症を疑い緊急手術を施行した.腸管の広範な浮腫と褐色変化を認め,終末回腸から下行結腸を切除し回腸人工肛門とS状結腸粘液瘻を造設した.第4病日,内視鏡時の粘膜生検培養より腸管出血性大腸菌O-157とVero毒素が検出された.術後は良好に経過し第60病日に退院となった.
    本疾患は保存的治療が基本であり外科的治療を必要とした報告は少ない.汎発性腹膜炎を呈する本疾患の場合,治療の機会を逸することなく手術も考慮する必要があると考えられる.
  • 真鍋 高宏, 山崎 一麿, 新井 英樹, 塚田 一博
    2015 年 76 巻 4 号 p. 822-826
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,男性.4年前より,慢性的な腹部膨満感,便秘のため,当院外来に定期通院していた.排便コントロールは比較的良好であったが,1年前よりS状結腸軸捻転を頻回に繰り返すようになっていた.S状結腸および横行結腸を病変部位とするCICPと診断し,軸捻転の予防と腸閉塞症状の改善目的に大腸亜全摘術を施行した.経口摂取再開には時間を要したが,最終的に十分な食事摂取が可能となった.病理組織学的検査では,拡張部位にAuerbach神経叢および神経節細胞の萎縮と減少を認めた.現在まで,術後24カ月が経過しているが腸閉塞症状の再発を認めていない.本邦ではCICPの報告例が少なく,診断・治療ともに明確な指針がないのが現状である.大腸亜全摘術を行い,症状の改善を得ることができた1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 吉田 亮介, 脇 直久, 河合 央, 石崎 雅浩, 西 英行, 山下 和城
    2015 年 76 巻 4 号 p. 827-831
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    上行結腸憩室症に対する腹腔鏡下大腸切除術後に発症した上腸間膜静脈(SMV)・門脈(PV)血栓症の1例を経験したので報告する.症例は57歳,男性.血液検査でHgbが17.6g/dl,Hctが51.0%と高値であった.上行結腸憩室症に対して待機的に腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.術後18日目に心窩部痛と背部痛を生じ,CT検査でSMVとPVにおける血栓を認めた.直ちにヘパリン,ウロキナーゼとワーファリンの投与を開始し,7日後にワーファリンの単独投与へ移行した.術後92日目のCT検査で血栓はSMVの分枝の一部に残存するのみであった.腹腔鏡下大腸切除術後に発症したSMV・PV血栓症は極めてまれである.自験例について,炎症を伴わない待機手術であったことから赤血球増多の状態に加えて,手術に伴う何らかの要因により発生した可能性が高いものと考えられた.
  • 森 幹人, 首藤 潔彦, 小杉 千弘, 平野 敦史, 田中 邦哉, 幸田 圭史
    2015 年 76 巻 4 号 p. 832-837
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    胃転移をきたす主な悪性腫瘍として肺癌・乳癌・悪性黒色腫・食道癌があり,大腸癌はまれである.今回われわれは,下行結腸癌術後胃転移再発の1例を経験した.症例は57歳,女性.2014年1月,下行結腸癌に対し結腸左半切除術を施行.病理診断はD,Circ,2型,tub2,pT4a(SE),pN0,pStage IIであった.術後化学療法のため当院通院中であったが,術後5カ月経過のCEA値が16.9ng/mlと上昇し腹部造影CT施行.胃体上中部に15×15cmの腫瘍を認めた.下行結腸癌術後胃転移再発の診断にて胃全摘術を施行.術中腹腔内検索にて小腸に4cmの粘膜下腫瘍を認め小腸転移と診断し追加切除した.術後6カ月経過し無再発生存中である.本邦における大腸癌の胃転移に関する報告例は自験例を含め30例であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 大佛 智彦, 米山 克也, 笠原 彰夫, 山本 裕司, 利野 靖, 益田 宗孝
    2015 年 76 巻 4 号 p. 838-843
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍の臍転移はSister Mary Joseph's noduleと呼ばれ,予後不良な徴候として知られている.今回,臍炎様症状が診断の契機となったS状結腸癌臍転移の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は90歳,女性.臍部の発赤を主訴に前医を受診,臍周囲炎の診断にて処置を繰り返していたが改善しないために,2週間後に当科へ紹介受診された.触診で臍部に約2cm大の硬結を触知し,浸出液と悪臭を認め,悪性腫瘍の臍転移を疑い生検し腺癌の臍転移と診断された.全身精査にてS状結腸癌の臍転移,肝転移と診断された.開腹所見と病理組織学的検査より,臍転移の転移様式は血行性転移が最も疑われた.治療は,患者が超高齢者でありQOL改善目的でS状結腸切除+臍切除を施行した.退院後は対症療法が中心となり,6カ月後に死亡した.臍腫瘤を認めた場合,本症を念頭に置き早期診断・治療を行うことが重要である.
  • 安留 道也, 萩尾 浩太郎, 鈴木 修
    2015 年 76 巻 4 号 p. 844-849
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.排便困難にて当科受診,精査にて大動脈周囲リンパ節転移を伴う直腸癌と診断され,2012年9月に低位前方切除術を施行した.術後化学療法を行いリンパ節転移は部分奏効を保っていた.2014年10月に下肢筋力低下,排尿障害を認め当院受診.脊椎単純MRI検査にて転移性馬尾腫瘍が疑われ緊急入院となった.入院数日後,両側感音性難聴を認め,ガドリニウム造影MRIを行ったところ,馬尾神経周囲および胸髄に沿い造影される領域が認められた.また,頭蓋内では脳溝に沿ったびまん性の造影効果および両側内耳道に沿った造影効果が認められ,癌性髄膜症と診断した.30Gyの全脳照射を行い,追加治療としてFOLFIRI+Bevacizumabを行った.その後,全身状態の悪化を認め,初発症状発症から9週間後に死亡した.大腸癌を原発とする癌性髄膜症は稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 山田 理大, 石井 大介, 谷 誓良, 浅井 慶子, 千里 直之, 三代川 斉之, 古川 博之
    2015 年 76 巻 4 号 p. 850-856
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.発症から23年経過した全大腸炎型,再燃・緩徐型の潰瘍性大腸炎のサーベイランス内視鏡検査にて直腸癌を指摘された.造影CTおよびMRIにて左側方リンパ節領域に15mm大の腫瘤を認め,左側方リンパ節転移が疑われた.潰瘍性大腸炎関連直腸癌,T3N3M0,Stage IIIbの診断にて,腹腔鏡下大腸全摘,回腸嚢肛門吻合とともに左側方郭清を施行したところ,閉鎖神経に連続するように紡錘状に腫大する類円型腫瘤を認め,閉鎖神経を切離して腫瘤を摘出した.病理組織所見では,免疫染色にてS-100陽性,MIB-1 index 1.6%,異型核分裂像を認めず,Antoni A type主体の良性神経鞘腫と診断した.術後にADLに支障をきたすような左下肢の神経学的症状は認めなかった.閉鎖神経発生の後腹膜神経鞘腫は稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 鍵谷 卓司, 木村 憲央, 豊木 嘉一, 石戸 圭之輔, 工藤 大輔, 鬼島 宏, 袴田 健一
    2015 年 76 巻 4 号 p. 857-862
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は43歳の女性で,検診時の腹部超音波検査で肝腫瘍を指摘され,当院へ紹介となった.腹部CT検査で肝S4に尾側へ突出する造影効果を伴う14mm大の腫瘍を認めた.肝腫瘍を疑い,腹腔鏡手術を施行した.術中所見では,腫瘍は胆嚢体部より発生しており,肝との連続性は認めなかったため,胆嚢摘出術を施行した.病理組織学検査では腫瘍成分は認めず,肝小葉構造からなり,異所性肝と診断した.異所性肝は自覚症状に乏しく,他疾患のスクリーニング時や手術時などに偶然発見される場合がほとんどであるが,肝細胞癌へ進展する例も報告されている.今回,術前診断に苦慮した胆嚢に生じた異所性肝の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 高田 智司, 田島 秀浩, 中沼 伸一, 林 泰寛, 高村 博之, 太田 哲生
    2015 年 76 巻 4 号 p. 863-867
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.前立腺炎を契機に腹部CTで肝S8に3つの異なる画像所見を呈する腫瘤性病変が指摘された.腫瘍1はドーム下の約1.5cmの充実性病変,腫瘍2は横隔膜に浸潤する約6cmの出血・壊死を伴う病変,腫瘍3は末梢胆管の拡張所見を伴う4cm大の嚢胞性病変とその内腔へ突出する2cm大の結節性病変であった.腫瘍1・2はCT/MRIの造影パターンから肝細胞癌に矛盾しないと考えられ,腫瘍3は肝嚢胞腺癌やIPNBなどとの鑑別を要したが,右肝切除術で3病変とも切除可能であり,手術を施行した.病理組織学的には腫瘍1・2は高~中分化肝細胞癌であり,腫瘍3は門脈・胆管浸潤を伴う低分化型肝細胞癌と診断された.腫瘍3は経門脈的に転移した肝細胞癌が嚢胞内に浸潤性発育して特殊な画像所見を呈したものと考えられ,非常に稀な病態と考えられた.
  • 前平 博充, 園田 寛道, 塩見 尚礼, 清水 智治, 仲 成幸, 九嶋 亮治, 谷 眞至
    2015 年 76 巻 4 号 p. 868-872
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は38歳,男性.後腹膜原発脱分化型脂肪肉腫に対して,後腹膜腫瘍摘出術を施行したが,肝十二指腸間膜内の遺残腫瘍による総胆管狭窄を認めた.初回手術から2カ月後に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的所見では,脱分化型脂肪肉腫が肝十二指腸間膜全体に浸潤しており,病理組織学的に切除断端陽性であった.自験例は,後腹膜原発脱分化型脂肪肉腫が肝十二指腸間膜へ被膜外浸潤し,肝十二指腸間膜内で結節性病変を形成したことで,胆管が圧排され胆管狭窄をきたしたと考えられたが,後腹膜原発脂肪肉腫で胆管狭窄をきたした報告例は過去に認めない.また,肉眼的には完全摘出したが組織学的切除断端陽性であったことから,脂肪肉腫の浸潤範囲を術前画像や術中所見で評価することは困難であると考えられ,まずはR2手術とならないような手術を心掛け,再発の早期発見に努めることが重要であると考える.
  • 森廣 俊昭, 青木 秀樹, 金谷 信彦, 須井 健太, 田中屋 宏爾, 竹内 仁司
    2015 年 76 巻 4 号 p. 873-879
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    肝内胆管癌は発見時には切除不能であることも多く,切除後の再発率も高い予後不良の疾患である.十二指腸直接浸潤を認めた肝内胆管癌の1例を経験し報告する.症例は63歳の女性で,約2年前から肝S4の低吸収域を限局性脂肪肝として近医で経過観察されていた.上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部に粘膜下腫瘍を認め,CTで肝S4から十二指腸に連続する33mm大の腫瘍を指摘された.十二指腸からの生検では神経内分泌腫瘍であり,腫瘍の主体は肝臓であることから肝腫瘤の十二指腸浸潤と考えられた.十二指腸合併肝亜区域切除およびリンパ節郭清を行ったところ,最終診断では肝内胆管癌と診断された.術後9カ月目に肝内再発を認めたが,TACEおよびRFAで加療し,術後31カ月現在も化学療法を継続し生存中である.肝内胆管癌の他臓器浸潤の報告例は少なく,緩徐に発育し十二指腸浸潤をきたすという特異な経過を示した.まれな症例であり報告する.
  • 榎本 好恭, 齊藤 研, 齋藤 礼次郎, 武田 郁央, 洞口 正志, 平山 克
    2015 年 76 巻 4 号 p. 880-884
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.平成16年に中部胆管癌に対し膵頭十二指腸切除術(PD)を施行,その後は無再発であったが,平成23年に全身倦怠感を主訴に来院された.CTとMRIにて肝後区域に多発した腫瘤を認め,後区域胆管に腫瘍の存在が示唆された.PD術後の胆管断端再発または肝内胆管癌を疑い手術の方針とした.PD術後の胆管断端再発の場合を考慮して,胆管空腸吻合部を含めた肝拡大右葉切除術を施行した.病理組織標本にて後区域に多発した腫瘤はすべて膿瘍であり,胆管空腸吻合部近傍の後区域胆管に腫瘍を認めた.腫瘍は吻合部からは離れており,その大部分が内腔の乳頭状部分であったことから,吻合部再発でなく異時性に発生した肝内胆管癌と診断された.術後経過は良好にて術後20日目に退院,現在も無再発生存中である.PD術後7年目に発生した異時性胆管癌に対し肝切除を行い,良好な経過をとることができたので,若干の肝文献的考察を加え報告する.
  • 高野 道俊, 山形 誠一, 志田 晴彦, 東 久登, 根岸 真人, 増田 幸蔵, 井上 泰
    2015 年 76 巻 4 号 p. 885-889
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,女性.下痢,皮膚掻痒感,半年間で4kgの体重減少あり近医受診し,腹部超音波とCTで膵頭部腫瘤を指摘され当院紹介となった.閉塞性黄疸のため,PTCDにて減黄を行った.ERCPにて細胞診を行い,免疫染色の結果は膵神経内分泌腫瘍の診断となった.腫瘍径は8.4cmあり,明らかな転移はなかったが,門脈・脾静脈に腫瘍栓を認め肝動脈浸潤も疑われたため,切除困難であると判断しエベロリムス内服とソマトスタチンアナログ筋注による化学療法を行った.7カ月後に腫瘍径は5cmに縮小した.門脈腫瘍栓は残存したが,肝動脈と腫瘍は離れ切除可能と判断し手術施行する方針とした.膵頭十二指腸切除,門脈合併切除(5cm),右外腸骨静脈を用いた門脈再建を行い根治切除した.術前化学療法施行後に根治手術を行った症例はまれであり若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 脇 悠平, 藤井 正彦, 原田 雅光, 河崎 秀樹
    2015 年 76 巻 4 号 p. 890-894
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    門脈輪状膵は,膵実質が門脈周囲を完全に包み込むまれな形態異常であり,“portal annular pancreas”として報告されている.今回,われわれは門脈輪状膵に上腸間膜動脈からのreplaced-右肝動脈を合併した十二指腸乳頭部癌の手術症例を経験したので報告する.患者は62歳の女性で,十二指腸乳頭部癌と診断され,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術前より上腸間膜動脈からの右肝動脈のreplacementを認めていた.術中に膵鉤部が門脈周囲を巻き込むように背側から左側に伸びて存在し,膵体部と癒合する形態異常を認め,さらに膵実質内を右肝動脈が走行していた.主膵管が門脈腹側にあることを確認し,膵体部は上腸間膜静脈左縁で切離し,輪状になった膵鉤部は可及的に膵体部近傍で切離後に縫合閉鎖した.術後,膵液漏を認めたが,保存的治療にて軽快した.
  • 一戸 大地, 木村 憲央, 豊木 嘉一, 石戸 圭之輔, 工藤 大輔, 袴田 健一
    2015 年 76 巻 4 号 p. 895-900
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は33歳の女性で,約1年前より腹部膨満を自覚するも放置していた.その後,下痢のため近医を受診した際に,腹部腫瘤を指摘されたため,精査・加療目的に当科へ紹介となった.腹部CT検査では,腹腔内にcyst-in-cyst構造を呈する,膵臓と連続する長径21cmの巨大腫瘍を認め,FDG-PET/CTでは隔壁構造部分に陽性集積を認めた.以上より膵粘液性嚢胞腫瘍が疑われ,脾温存膵体尾部切除術を施行した.切除標本は長径21cm,重量3,800g,チョコレート様の内容液を含んでいた.病理組織学的には,核・構造異型が高度であり,ER(+)とPgR(+)より,膵粘液性嚢胞腺癌(TisN0M0,fStage 0)と診断された.術後補助化学療法は施行せずに経過観察中であるが,術後1年2カ月経過した現在も再発を認めていない.巨大な膵粘液性嚢胞性腫瘍を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 杉浦 謙典, 熊谷 信平, 和城 光庸, 宮崎 勝
    2015 年 76 巻 4 号 p. 901-905
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は23歳,女性.突然の下腹部痛を自覚し,近医を受診した.翌日,症状が増悪したため,急性虫垂炎の診断で当院へ紹介受診した.
    腹部造影CTでは骨盤内に造影効果に乏しい11cm大の表面平滑,内部均一,境界明瞭な腫瘤を認め,腹部エコーでは,腫瘤は境界明瞭で内部は充実性であった.以上より腹腔内腫瘤の精査,加療目的に緊急入院した.翌日,腹部所見が増悪したため,緊急開腹手術を施行した.開腹したところ,骨盤内に暗青色のうっ血した腫瘤を認め,頭側から腫瘤に繋がる血管が捻転していた.捻転した血管を結紮切離し腫瘤を摘出した.摘出した腫瘤は14×11cmで割面は赤色で脾組織と思われた.本来の脾臓は左横隔膜下に存在していることより,副脾茎捻転と診断した.
    病理学的所見では疎らに白色脾髄と考えられる,脾臓構造を持ち,高度に鬱血を認めた.悪性所見は認めなかった.
    副脾茎捻転は稀な症例であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 勝部 亮一, 和久 利彦, 大多和 泰幸, 佐藤 直広, 神原 健, 藤原 俊義
    2015 年 76 巻 4 号 p. 906-910
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の男性.1週間前からの下腹部痛・排便困難を主訴に近医を受診した.腹部単純CTで膀胱頭側に腫瘤を認め,精査・加療目的に当院紹介となった.血液検査でWBC・CRPの上昇を認め,腹部造影CTでは膀胱頂部の壁肥厚と正中腹壁直下の臍部まで連続する腫瘤を認めた.画像所見から尿膜管癌を疑ったが,腫瘤内部に魚骨を疑う線状影を認めたことと入院後から膿尿を認めたことから,まず抗菌薬による治療を開始した.血液・尿所見は改善傾向にあり,腹部CTを再検したところ腫瘤は縮小しており,内部にみられた線状影は尿道内に移動していた.膀胱鏡で前立腺に刺入した魚骨が確認され,魚骨を経尿道的に摘出した.その後も抗菌薬治療を継続し腫瘤は完全に消失したため,腫瘤は魚骨による膀胱周囲膿瘍であったと考えられた.尿膜管疾患との鑑別が問題であったが,稀な経過で保存的治療を完遂できた症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 上野 峰, 行部 洋, 川崎 亮輔, 佐藤 正文, 下沢 英二
    2015 年 76 巻 4 号 p. 911-915
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の女性で,臍部の疼痛と排膿を主訴に当科を受診した.腹部CTでは臍から膀胱へ連続する腫瘤を認め,尿膜管膿瘍を疑う所見であり,一部は胃壁との境界が不明瞭であった.膀胱鏡では膀胱後壁に浮腫性変化を認め,尿膜管膿瘍に矛盾しない所見であった.以上より,尿膜管膿瘍の診断で手術を施行した.尿膜管膿瘍は大網・胃前壁に癒着しており,尿膜管切除,大網・胃・膀胱合併部分切除した.組織所見では,胃粘膜から膿瘍に連続する炎症細胞の浸潤の所見を認めた.経過は良好で術後13日目に退院した.本症例は手術の3年前に胃潰瘍穿孔を保存的に加療した既往があり,その際の画像所見では尿膜管膿瘍の所見を認めていなかった.その後,胃潰瘍は難治性であり,1年前に施行した腹部CTでは,胃壁に接して尿膜管膿瘍を疑う所見を認めていた.今回,尿膜管遺残に胃潰瘍が穿通し膿瘍を形成したと推察された1例を経験したので報告する.
  • 釜田 茂幸, 藤田 昌久, 新田 宙, 石川 文彦, 伊藤 博
    2015 年 76 巻 4 号 p. 916-921
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の男性で,胆石膵炎の疑いで当院へ搬送された.腹部CTでは中結腸動脈瘤と後腹膜血腫があり,腹腔動脈根部の狭窄が認められた.腹部血管造影でも腹腔動脈根部の狭窄があり,上腸間膜動脈から腹腔動脈への逆行性血流を認め,正中弓状靱帯圧迫症候群(median arcuate ligament syndrome:以下,MALS)と診断した.また,横行膵動脈に数珠状拡張と狭窄があり,segmental arterial mediolysis(以下,SAM)により形成された動脈瘤が後腹膜血腫の原因と考えられた.IVRによる塞栓では血流障害による腸管壊死の可能性があり,開腹手術で二つの動脈瘤と結腸を切除し,正中弓状靱帯の部分切除により血流正常化を行った.本症例では,MALSの合併による腹腔内動脈の血行動態に変化があり,これらがSAMにより形成された動脈瘤の破裂に関与した可能性も考えられた.
  • 園田 洋史, 南村 圭亮, 遠藤 裕平, 入江 彰一, 平田 泰, 小林 隆
    2015 年 76 巻 4 号 p. 922-925
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,女性.2008年11月(46歳時),右内鼠径ヘルニアに対し,腹膜前腔アプローチによるKugel patch repairを施行された.2009年より頻尿が出現し,膀胱炎の診断で抗菌薬の内服加療をしていたが症状の改善を認めなかった.2010年5月,精査目的に施行された膀胱鏡検査では膀胱頂部に腫瘍性病変を指摘され,骨盤CTでは石灰化を伴う膀胱腫瘤を認めた.経尿道的膀胱腫瘍生検を施行したところ膀胱内異物(メッシュ)と診断され,2010年6月にメッシュ除去術を施行した.メッシュはHesselbach三角を十分に覆う形で局在し,3×2cmにわたり膀胱内へ露出していた.術後経過は良好で術後12日目に退院となった.今回われわれは,繰り返す膀胱炎を契機に発見された,鼠径ヘルニア根治術後にメッシュの膀胱内迷入をきたした1例を経験したので報告する.
  • 稲垣 公太, 竹田 伸, 稲岡 健一, 加藤 公一, 中山 裕史, 片岡 政人
    2015 年 76 巻 4 号 p. 926-930
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は87歳,男性.左鼠径部膨隆を自覚し,近医で鼠径ヘルニアの診断にて一年間の経過観察となった.心窩部痛出現し精査加療目的に当院紹介となり,画像検査にて40cm・22cm・5cm大の腫瘍を計3カ所認め,脂肪肉腫を疑い腫瘍摘出術が施行された.腫瘍はそれぞれ小腸間膜・後腹膜・直腸間膜から発生しており,総重量5,701g,病理組織学的には,1カ所が脱分化型,2カ所が高分化型脂肪肉腫であった.鼠径部膨隆をきたした要因として,後腹膜由来の脂肪肉腫が内鼠径輪より脱出していた.腫瘍を内鼠径輪より腹腔側に引き出し切除後,内鼠径輪をParietex meshで閉鎖した.術後経過良好で退院となり,術後現在4カ月再発の兆候は認めていない.多中心性であること,また鼠径部膨隆を契機に発見された自験例は稀であり,診断の遅れはきたしたが,術前診断に至り一期的に根治手術可能であった1例を経験したため若干の文献的考察を加え報告する.
  • 三上 和久, 古田 浩之, 中村 崇
    2015 年 76 巻 4 号 p. 931-935
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.両側の大腿骨人工骨頭置換術と複数の腹部手術歴があった.2日間持続する腹痛と嘔吐にて紹介搬送され,腹部CTから癒着性イレウスと診断された.骨盤底はアーチファクトの影響で読影困難だった.しかし,改めてアーチファクトの影響が少なくなるようCT条件を調整したところ,左閉鎖孔に嵌頓する小腸を同定することが可能となり,超音波検査とあわせて左閉鎖孔ヘルニア嵌頓によるイレウスと診断を改め,即日緊急手術となった.人工物によるアーチファクトの影響で一見読影困難にみえても,CT条件の調整と超音波検査を併用することで,アーチファクト部でも積極的に読影することが重要であると考えられた.
feedback
Top