2015 年 76 巻 5 号 p. 1004-1008
症例は37歳,男性.統合失調症のため精神科入院中であった.外出時に自殺企図により酸性液体洗剤(サンポール®)を服用し,誤嚥性肺炎を発症したため,前医で人工呼吸器管理の下に抗生剤治療を行った.服用2カ月後から経口摂取後に嘔吐を繰り返すようになり,腐食性幽門狭窄が疑われたため精査加療目的に当院当科紹介受診となった.透視下上部消化管内視鏡検査では,幽門前庭部の狭窄を認め,内視鏡は通過不能であった.酸性洗剤による腐食性幽門狭窄と診断し,手術加療の方針とした.術中所見では狭窄が広範囲であり,膵臓との癒着も疑われたため空置的胃空腸吻合術を施行した.酸性洗剤の服用による消化管の遅発性瘢痕狭窄は外科治療を要することがあり,文献的考察を加えて報告する.