2015 年 76 巻 5 号 p. 1110-1113
症例は73歳,男性.肛門痛を主訴に当科外来受診した.直腸診で直腸に魚骨が刺入しているのを確認し,経肛門的に除去した.4日後に発熱および肛門痛,左下腹部痛にて再度当科外来受診した.腹部CT検査にて前膀胱間隙と直腸周囲に遊離ガスを認めたため,魚骨の直腸穿通による遅発性骨盤部腹膜外腔膿瘍と診断し,同日緊急手術を施行した.腹膜前腔の剥離を進め,左傍直腸腔に到達すると,多量の排膿を認めた.洗浄後,左傍直腸腔と前膀胱間隙にドレーンを留置した.炎症波及から尿閉となる可能性を考慮し膀胱瘻造設し手術終了した.術後はドレーンより洗浄継続し,術後55日目にはドレーンを抜去した.術後56日目に膀胱瘻を閉鎖,術後58日目に退院とした.退院後も合併症無く経過している.今回われわれは,魚骨により遅発性に直腸穿通に至り,外科的治療を要した1例を経験したので若干の文献的考察も含めて報告する.