2015 年 76 巻 5 号 p. 1103-1109
症例は65歳の男性で,下血で発症したRSとRaの直腸二重癌に対して低位前方切除術を施行した.病理診断はSE・A,N1,H0,P0,M0,Stage IIIaであった.術後,縫合不全から汎発性腹膜炎をきたし,横行結腸人工肛門造設を行った.腹膜炎は軽快し,3カ月後に人工肛門閉鎖を行った.外来経過観察中,術後2年の腹部CTで胃周囲の脂肪織内に結節を認めた.PET-CTで結節にFDGの集積を認めたため,直腸癌腹膜播種再発と診断し,化学療法を行った.結節は縮小を認め,化学療法を1年半継続した.他臓器への転移を認めなかったため手術を行った.開腹すると大網内に白色の結節を認め切除した.病理組織学的検査では結節の中央にアニサキス幼虫を認め,消化管外アニサキス症と診断された.消化管外アニサキス症はまれな疾患で術前診断は困難であるが,腹腔内結節の鑑別に加えるべき疾患と考えられた.