日本臨床外科学会雑誌
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症例
Aortic saddle embolismと結腸間膜出血同時発生の1例
藤居 勇貴村上 隆啓嘉陽 宗史八幡 浩信福里 吉充上田 真
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2015 年 76 巻 5 号 p. 985-988

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抄録

症例は63歳,男性.不整脈の既往歴なし.入浴後の突然の腰痛と腹痛,両下肢脱力にて当院へ救急搬送された.身体所見上,両足背動脈の脈拍欠如,両下肢完全麻痺,肛門括約筋の緊張低下があり,左上腹部の圧痛と反跳痛を認めた.造影CTにて右腎動脈分岐部から両側総腸骨動脈にかけての腹部大動脈塞栓,および左結腸間膜内に造影剤の血管外漏出を伴う血腫を認めた.血行動態不安定であり,緊急で(1)Fogartyカテーテルによる血栓除去および大腿動脈-大腿動脈バイパス術,(2)開腹止血術を手術室にて同時に施行した.開腹所見では,左結腸間膜に血腫を認め,左側結腸は壊死していたため左半結腸切除術を施行した.術後は急性腎障害,腹腔内膿瘍などを合併したが,救命・救肢に成功し,第169日目に退院となった.大動脈塞栓症に結腸間膜出血を合併することは非常に稀で重篤な疾患であるが,早期診断・治療を行うことで救命可能と考えられた.

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© 2015 日本臨床外科学会
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