日本臨床外科学会雑誌
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症例
大動脈閉塞バルーン併用下の手術が有効であった腹部外傷の3例
苛原 隆之諸江 雄太磐井 佑輔
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2015 年 76 巻 5 号 p. 989-993

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抄録

腹部外傷による腹腔内出血に対し,開腹に先立つ下行大動脈遮断として大動脈閉塞バルーン(intra-aortic balloon occlusion;IABO)を使用し有効であった3例を報告する.症例1は18歳の男性.交通外傷による脾損傷・腎損傷に対し術前IABOを挿入し循環動態を安定させ,開腹止血・脾摘・腎摘を行った.症例2は46歳の男性.自傷による腹部刺創に対する開腹術前に予防的にIABOを挿入した.開腹すると肝左葉に刺創を認め,IABOにより出血を制御しつつ良好な視野で縫合止血を行い得た.症例3は40歳の男性.交通外傷による腸間膜損傷に対し術前IABOを挿入し循環動態を安定させ,開腹止血を行った.術後,一過性に腎機能悪化を認めたが回復した.IABOは術前の循環動態を安定させるとともに,術中の出血制御と良好な視野確保・止血に寄与し有効であるが,虚血による合併症に注意が必要である.

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© 2015 日本臨床外科学会
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