日本臨床外科学会雑誌
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症例
保存的治療が奏効したプロテインC欠損症に伴う上腸間膜静脈血栓症の1例
前田 晋平高橋 道長佐藤 俊赤田 昌紀井上 亨悦内藤 広郎
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2015 年 76 巻 7 号 p. 1609-1615

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抄録

症例は63歳,男性.腹痛,嘔吐を主訴に当院へ救急搬送となった.造影CTで上腸間膜静脈内の広範囲な血栓,腹水,空腸の限局的な浮腫性壁肥厚を認めた.血栓は門脈1次分枝まで認めたが脾静脈により門脈血流は保たれ,明らかな腸管虚血はみられなかった.上腸間膜静脈血栓症の診断で入院,厳重な観察下にウロキナーゼとヘパリンによる保存的治療を開始した.胸腹水と急性呼吸窮迫症候群による呼吸不全のため,5日目から1週間の呼吸器管理を要したが保存的に改善.入院時血液検査によりプロテインC欠損症の診断となった.ワーファリン継続投与とし28日目に退院し,遅発性腸管狭窄もなく経過観察中である.上腸間膜静脈血栓症は,うっ血性梗塞により腸管壊死をきたし手術が必要になることが多いが,腸管大量切除や縫合不全,再発の危険性も高い.保存的治療が奏効したプロテインC欠損症による上腸間膜静脈血栓症の報告は極めて稀であったため報告する.

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