2015 年 76 巻 7 号 p. 1772-1776
症例は66歳,女性.1カ月前から吃逆が多く近医受診.腹部X線写真で胃拡張を指摘され,幽門狭窄の疑いで当院紹介となった.腹部膨満以外に異常所見なし.上部消化管内視鏡検査で幽門に高度狭窄および後壁中心に粘膜下腫瘍様隆起を認めた.生検するもGroup1であったが,腹部エコーで十二指腸球部への浸潤が疑われた.粘膜下腫瘍様の胃癌を否定できず,確定診断および通過障害の治療目的に手術を施行した.十二指腸浸潤を伴う胃癌に準じた幽門側胃切除術,D2+No.12b/p,13a,14vリンパ節郭清を施行した.病理組織検査にて異所性膵の癌化と診断.No.5,6,8a,13aにリンパ節転移を認めた.
総合所見はpT3,pN2,sH0,sP0,pCY0,pM1,fStage IVであった.胃粘膜下腫瘍の診療の際,稀ではあるが胃異所性膵原発腺癌も鑑別に挙げ,リンパ節転移を考慮した術式を検討する必要性も示唆される.