抄録
炭素繊維補強樹脂(CFRP)の品質や安全性を担保するために,超音波検査技術の高度化が望まれている.CFRPは炭素繊維を織り込んだ薄いシートを任意の角度で積層して成形されるため,用途や要求性能に合わせて専用設計が必要となる.このとき,材料異方性が発現することになり,超音波の伝搬速度が方向によって異なるため,事前にこの特性を把握することが肝要である.超音波探傷におけるCFRPの数理モデルと波動伝搬解析技術の構築を見据えて,その際の基本的なパラメータである弾性スティフネスを精度良く求める技術を開発することが本研究の目的である.ここでは,レーザー超音波法を用いて超音波伝搬時の面外変位を各点で計測し,その全波形を時空間フーリエ変換することで位相速度を抽出する.位相速度と弾性スティフネスはChristoffel方程式を用いて陽な形で表すことができる.ここでは,複数の方向の位相速度から一方向強化CFRPの5つの独立な弾性スティフネスを求める最適化問題を構築し,最小二乗法によってこれを求める.得られた弾性スティフネスを圧縮試験で得られた結果と比較する.また,この弾性ティフネスをもとに数理モデルを作り,時間領域の有限要素解析を実行する.数値的に得られた群速度と可視化から得られた群速度とを比較し,本手法によって求めた弾性スティフネスの妥当性について示す.