2015 年 76 巻 8 号 p. 1938-1941
症例は74歳,男性.10日前から下腹部痛が出現し,徐々に増悪してきたため,当院を受診.下腹部に筋性防御を伴う圧痛を認め,採血では炎症反応の上昇を認めた.腹部造影CTでは骨盤腔に膿瘍形成を認め,緊急手術を施行した.回腸末端から約120cm口側に管状の重複腸管を認め,分岐した腸管が盲端で膿瘍を形成し,S状結腸との癒着を認めた.膿瘍を伴う回腸重複腸管と診断し,重複腸管を含めた小腸切除術を行った.病理検査では,重複腸管の盲端部に膿瘍形性を認め,盲端と膿瘍の間に腺癌を認めた.回腸に管状型に発生した重複腸管の癌化の症例は本邦第1例目であり,癌化を伴う回腸重複腸管で膿瘍を形成した症例としても本邦第1例目であり,極めて稀であるため症例報告する.