2015 年 76 巻 8 号 p. 1969-1973
症例は維持血液透析中の53歳,女性.徐々に増悪する下腹部痛で受診し,腹部CTにてS状結腸穿孔による急性汎発性腹膜炎と診断し,S状結腸部分切除および単孔式人工肛門造設を施行した.
術後21日目より人工肛門周囲の皮膚壊死が見られ,CTにて皮下の気泡貯留,腹腔内および後腹膜腔の膿瘍形成を認め,ストマ腸管の壊死・穿孔が疑われた.再手術では腸管穿孔は無いものの,広範な腹壁壊死と腹壁内膿瘍を認め,壊死腹壁の切除デブリードメントと左側結腸切除,人工肛門再造設を施行した.
病理検査にて切除標本の腸間膜よりムコール菌糸が検出され,gangrenous typeの皮膚型ムコール症と診断し,抗真菌薬の投与を追加して集中治療を継続したが治療抵抗性であり,術後74日目に多臓器不全にて死亡した.
Gangrenous typeの皮膚型ムコール症は,重篤かつ急激な転帰をたどることがあるので報告した.