日本臨床外科学会雑誌
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症例
Lynch症候群に関連する4重複癌に発症した胆管内乳頭状腫瘍の1例
豊島 雄二郎横田 良一菊地 弘展田口 宏一吉田 行範岩木 宏之
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キーワード: IPNB, 多重癌, Lynch症候群
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2015 年 76 巻 8 号 p. 2026-2031

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抄録

症例は64歳の男性で,既往歴に上行結腸癌・左腎盂癌がある.2008年,前医のCTで肝内胆管拡張を指摘された.2010年6月,直腸癌・胃癌の精査加療目的に当院紹介受診.胆管拡張は2年前のCTと変化なく,ERC下生検で悪性像は認めなかった.進行直腸癌・胃癌の手術を優先し,胆管腫瘍は慎重な経過観察とした.2011年5月のCTで腫瘍の増大傾向を認め,胆管内乳頭状腫瘍の術前診断で肝左葉切除および尾状葉切除術を行った.病巣は左肝管分岐部から肝管に沿って外側区域全体に及び,さらに左右肝管分岐部に乳頭状病変を認めた.肝管壁にわずかな浸潤を認めた.長い経過から考えて,進行の遅い低悪性度の腫瘍と考えられた.
自験例では既往歴および家族歴の聴取により,Lynch症候群を想定することが重要であった.また,限局的な肝内胆管拡張と乳頭状腫瘍を認めた場合,本疾患も念頭に置き,切除適応を考慮する必要がある.

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