2015 年 76 巻 8 号 p. 2032-2036
症例は72歳の男性で,上行結腸閉塞にて当科を紹介受診した.CTにて上行結腸に壁肥厚を認め,口側腸管の拡張を認めた.下部消化管内視鏡検査にて上行結腸に粘膜下からの狭窄を認めた.大腸ステントにて狭窄を解除し,待機的に手術を施行した.開腹所見では上行結腸の漿膜に露出する腫瘍の他に,腹膜播種巣を多数認め,空腸には30mm大の腫瘍を認めた.回盲部切除術,空腸部分切除術を施行した.病理組織学的所見にて空腸の異所性膵に発生した腺癌で,上行結腸は転移病変と診断した.今回,われわれは空腸の異所性膵に発生した腺癌の1例を経験した.特に転移病変である上行結腸の腸閉塞で発症した点がまれであると考えられた.