日本臨床外科学会雑誌
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症例
術後3年目に下大静脈転移をきたし人工血管置換術を行った直腸癌の1例
高橋 亜紗子斉田 芳久榎本 俊行高林 一浩長尾 さやか草地 信也
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2016 年 77 巻 1 号 p. 122-127

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抄録

下大静脈腫瘍塞栓の原発巣として,大腸癌からの転移の報告は少なく,孤立性に転移をきたすことはまれである.今回,直腸癌術後3年目に,他臓器に転移を認めず下大静脈腫瘍塞栓として転移した症例に対し,血管切除および人工血管置換術を施行したので報告する.症例は67歳,男性.右総腸骨静脈の深部静脈血栓症の原因検索でStage IIIaの進行直腸癌を認め,前方切除術を施行した.術後補助化学療法を半年間行ったが,術後3年目にCEAが著増した.下大静脈から右総腸骨静脈の血管内に腫瘤性病変を認め,他臓器に明らかな転移がないことから転移性腫瘍と判断し手術を施行した.下大静脈~右総腸骨静脈内に充実性腫瘤を認めたが,右総腸骨静脈遠位まで進展しており可能な限り剥離して離断した.下大静脈および左総腸骨静脈を切離して人工血管を用いバイパス術を行った.現在全身化学療法を導入しているが,再手術後1年経過し明らかな再発を認めていない.

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© 2016 日本臨床外科学会
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