日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝切除術後に発生した腹腔内デスモイド腫瘍の1例
久米村 秀風呂井 彰井上 真岐二渡 久智門野 潤井本 浩
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2016 年 77 巻 1 号 p. 135-141

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抄録

デスモイド腫瘍の多くは,腹壁または腹壁外に発生し,腹腔内発生は比較的稀である.肝内胆管癌術後に局所再発を疑い切除し,術後病理で腹腔内デスモイド腫瘍と診断された1例を経験したので報告する.症例は57歳,男性.2011年9月,肝S4の肝内胆管癌,食道胃静脈瘤に対して肝内側区域切除術,Hassab手術を行った.術後のCTで肝切除部の近傍に結節性病変を認め,徐々に増大した.他の画像検査でも局所再発が疑われ手術を行った.肝外側区域下面に大網に被覆され肝円索の切離断端と連続する5cm大の腫瘤を認め摘出した.組織学的には膠原線維の間質を伴った紡錘形細胞が束状配列を示し,核分裂像はほとんど認めず,免疫組織学的所見も合わせ,総合的にデスモイド腫瘍と診断された.家族性大腸ポリポーシスの合併はなく,肝切除時の機械的刺激が誘因となった可能性が考えられた.追加治療は行わず,術後2年3カ月無再発生存中である.

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© 2016 日本臨床外科学会
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