日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡下胆嚢摘出術直後に発症した感染性肝嚢胞の1例
生田 大二前平 博充塩見 尚礼赤堀 浩也仲 成幸谷 眞至
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2016 年 77 巻 1 号 p. 148-153

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抄録

症例は56歳,男性.胆嚢結石症に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術後3日目以降も心窩部痛と発熱が持続し,TAZ/PIPCを投与したが改善せず,CTおよび腹部超音波検査で感染性肝嚢胞と診断した.術後10日目に超音波誘導下に経皮経肝膿瘍ドレナージを施行し,白色膿性排液を50ml吸引し,ドレーンを留置した.嚢胞内容液および血液の細菌培養検査では有意な病原体の発育は認めなかった.ドレナージ後は胆汁流出もなく速やかに症状は改善し,術後24日目に退院となった.肝嚢胞は日常の診療で遭遇する機会が多く,無症状で経過することがほとんどであるが,稀に手術後に感染をきたすという報告がある.自験例では,胆嚢に手術操作が加わることによって,胆嚢炎の起炎菌が周囲の静脈を介して経門脈的に肝嚢胞に波及したと推察した.胆嚢炎を併発している患者の胆嚢摘出後には,肝嚢胞の感染の発症を考慮しておく必要があると思われた.

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