抄録
症例は38歳の女性で,左乳房に大きさ8cm,境界明瞭,辺縁整で可動性良好な腫瘤を認め来院した.葉状腫瘍の診断で腫瘍摘出術を行い,組織学的に良性葉状腫瘍,切除断端陰性であった.術後1年目に局所再発し,1年5カ月目には径23cmにまで増大した.乳房切除術が施行され組織学的には境界病変であった.その後,局所再々発をきたし境界病変と診断された.次いで,右乳房に急速に増大する腫瘤が出現し,乳房切除術が施行され悪性葉状腫瘍の診断であった.術後8カ月目に右胸壁に局所再発し,腫瘍は自壊して潰瘍を形成し,胸壁浸潤,多発肺・骨転移を認めた.MIB-1 indexは左葉状腫瘍の初発,再発,再々発時がそれぞれ4.0%,22.0%,25.6%で,右葉状腫瘍の初発,再発時は23.0%,21.6%と左の初発時以外は高値を示し,MIB-1 indexは臨床所見と相関しており,葉状腫瘍の良悪性の鑑別に有用である可能性が示唆された.