2016 年 77 巻 12 号 p. 2936-2940
症例は65歳,男性.検診の上部消化管内視鏡検査にて,15cm長の全周性long-segment Barrett's esophagus (LSBE)と,一部隆起性成分を伴う発赤調の塑造な粘膜病変を認め,複数個所の生検にて広範囲に及ぶBarrett食道腺癌の診断につき胸腔鏡下食道切除,腹腔鏡補助下胃管再建を施行した.切除標本の病理所見にて,腫瘍の範囲は12cm長のBarrett食道粘膜のほぼ全体を占めており,腫瘍の最深部は浅層粘膜筋板以深に及んでいることより,pT1a-LPM N0M0 pStage 0と診断された.LSBE由来のBarrett食道腺癌ではBarrett食道粘膜内にびまん性に発生することがあるが,Barrett食道粘膜のほぼ全域が癌に置換された症例に対する外科切除例である本症例のような本邦からの報告は比較的稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.