日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
77 巻, 12 号
選択された号の論文の37件中1~37を表示しています
原著
  • 尾身 葉子, 羽二生 賢人, 櫻井 桃子, 永井 絵林, 徳光 宏紀, 吉田 有策, 坂本 明子, 堀内 喜代美, 岡本 高宏, 福島 賢慈 ...
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2875-2880
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    甲状腺癌に対する30 mCiの術後放射性ヨウ素(I-131)内用療法(アブレーション)の治療成功率と問題点について報告する.対象症例は102例.治療効果判定基準は,抗サイログロブリン(Tg)抗体陰性群では,TSH上昇時の血清Tg濃度が2 ng/ml以下,治療後のスキャン(WBS)で異常集積がないのいずれか,抗Tg抗体陽性群ではWBSのみで判断した.成功率は抗Tg抗体陰性で76.7%で,抗Tg抗体陽性で82.4%であった.アブレーションを2回行うも,集積残存あるいはTg高値のため,100 mCiのI-131治療を要した症例が3例存在した.WBSの判定に迷う症例があり,また効果判定基準としてのTgのカットオフ値が一定しておらず,治療効果の判定に施設間差を生じる理由となる.遠隔転移はないが30 mCiでは不十分で100 mCiのI-131内用療法を要する症例があるということも明らかとなった.
臨床経験
  • 松村 真由子, 木村 芙英, 海瀬 博史, 山田 公人, 石川 孝, 河野 範男
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2881-2885
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    乳癌において骨は初発転移部位として最も多く,進行乳癌で30-85%の患者に骨転移を認めるとされている1)~3).骨転移単独と骨以外の臓器転移の予後を比較検討した文献は少なく,今回われわれは当院における骨転移症例を後ろ向きに解析し予後について比較検討した.1997年6月から2013年12月の間に当院にて乳癌骨転移と診断された222例を対象とした.初発再発部位が骨単独であった群=A群,初発再発部位が骨以外であった群=B群,骨と骨以外を同時に再発した群=C群の3群に分け,観察期間を60カ月とした.無増悪生存期間はA群48.2カ月,B群42.0カ月,C群42.2カ月でA群が最も長かった.観察期間中央値の生存率はA群が86%,B群が73%,C群が65%,p=0.036と骨単独初発では優位に生存期間が長かった.以上より,初発転移部位が骨単独であった場合は長期の予後が見込める.
症例
  • 鍵谷 卓司, 西 隆, 西村 顕正, 井川 明子, 岡野 健介, 諸橋 聡子, 鬼島 宏, 袴田 健一
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2886-2891
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    ミノサイクリン投与により甲状腺組織が黒褐色調を呈する病態は,黒色甲状腺と呼ばれ,非常にまれである.症例は52歳の女性で,皮膚疾患に対して約20年間のミノサイクリンの投与歴がある.乳癌術後の経過観察中に甲状腺腫瘍を指摘された.精査の結果,甲状腺乳頭癌と診断し,甲状腺全摘術および頸部リンパ節郭清術を予定した.手術中,黒褐色に変色した甲状腺を認めたが,術式の変更なく手術は終了し,術後経過は良好であった.病理組織学的所見では,甲状腺非腫瘍部組織の濾胞細胞の細胞質内にメラニン様物質の沈着が認められたことから黒色甲状腺と診断された.黒色甲状腺は,黒褐色を呈する以外に臨床的特徴に乏しく,手術や剖検時に偶然発見される場合がほとんどである.黒色甲状腺の存在さえ知っていれば特別な対処は必要ないが,まれな疾患であり,存在を知らなければ判断に迷う可能性もあると考えられたため,自験例に文献的考察を加えて報告する.
  • 和久 利彦, 園部 宏
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2892-2897
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.5年前に2cmであった甲状腺右葉腫瘤が4cmに増大し,自覚症状もあって当院を再受診.甲状腺超音波検査では境界明瞭で内部エコーレベルは低く均質な腫瘤であり,穿刺細胞診によって鑑別困難と診断された.CT検査では周囲臓器浸潤,リンパ節腫大,肺肝骨への遠隔転移や他臓器の腫瘤性病変も認めなかった.悪性腫瘍診断で甲状腺全摘術+D2aを行った.病理組織学的所見より,筋膜炎様の間質を伴う甲状腺乳頭癌,T4a,N1a,M0,Ex2(気管),Stage IVAと診断した.術後1年4カ月で,頸部局所再発,左前頭葉孤立性脳転移,多発骨転移・多発肺転移・多発肝転移をきたし,病状の急速な悪化で永眠された.PTC-FSは急速に予後不良な経過を辿る可能性があると考えられ,診断後迅速に治療を行うことが肝要である.
  • 佐藤 伸也, 横井 忠郎, 高橋 広, 山下 弘幸
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2898-2904
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は31歳の男性.高カルシウム血症の精査目的で当院紹介.超音波検査で副甲状腺3腺の腫大を認めた.造影CTで前縦隔に最大径12cmの腫瘍を認めた.原発性副甲状腺機能亢進症と胸腺神経内分泌腫瘍を併発した多発性内分泌腫瘍症1型(multiple endocrine neoplasia type 1:MEN1)が疑われ,まず他院にて胸骨正中切開で拡大胸腺摘出,右肺下葉部分切除術が施行された.病理でatypical carcinoidの診断であったため60Gyの術後外照射がなされた.術前に施行された遺伝子検査でMEN1遺伝子の変異も判明した.その後,当院で副甲状腺全摘および一部副甲状腺組織の前腕移植を施行した.病理は副甲状腺過形成であった.術後6カ月の時点で血清カルシウム値はアルファカルシドール1μg/日内服下で正常範囲内にあり,胸腺神経内分泌腫瘍の再発やMEN1関連腫瘍の新たな出現は認めていない.
  • 村上 千佳, 春田 るみ, 武智 瞳, 竹元 雄紀, 米原 修治
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2905-2909
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    乳腺から発生する神経内分泌癌(以下NEC)は,消化管や肺に発生するNECに類似した組織学的形態を有し,神経内分泌系マーカーの発現を伴う腫瘍である.2012年にWHOはこのような神経内分泌形質を有する乳癌をcarcinoma with neuroendocrine featuresと定義し,さらに3亜型に分類した.頻度は全乳癌のうち約2~5%と比較的まれである.男性乳腺から発生する浸潤癌のうち,NECは0.1%と報告されている.
    症例は73歳の男性,10年前に切除した鎖骨部腫瘤の再発を認め,当科を受診した.針生検で乳腺から発生したNECの再発が強く疑われ,骨および胸膜,縦隔リンパ節に多発転移を認めた.ER陽性,PgR陽性であったためタモキシフェン投与を開始したところ,腫瘍マーカーの低下および胸膜転移巣の縮小,胸水減少を認め,現在も治療を継続している.
  • 藤井 雄介, 平原 典幸, 谷浦 隆仁, 百留 美樹, 板倉 正幸, 田島 義証
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2910-2914
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の女性で,手術不能乳癌T2N1M1(PER,PLE),Stage IVと診断され,パクリタキセルが開始された.原発巣は縮小し,胸水は消失するも,腹水は減少せず,審査腹腔鏡を施行した.小腸・結腸・大網は一塊となり,腹膜は肥厚していた.腹膜の一部を病理組織学的検査に提出し,乳癌腹膜播種の所見であった.パクリタキセル・ベバシズマブ併用療法が開始され,腹水は減少したが,2コース目の26日目に消化管穿孔をきたし,開腹術を施行した.一塊となっていた腸管は癒着が解除され全検索が可能で,Treitz靱帯から120cmの小腸に穿孔を認め,単純閉鎖・腹腔内洗浄ドレナージを行った.術後は概ね良好に経過し,術後13日目に腫瘍内科転科となった.総合的に判断して,ベバシズマブが著効し,小腸穿孔をきたしたと考えられた.乳癌でのベバシズマブによる消化管穿孔は本邦初例であり,非常に貴重な症例を経験したので報告する.
  • 遠藤 豪一, 郡司 崇志, 今野 修
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2915-2919
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    小腸壊死にて手術施行後肺梗塞,門脈血栓症等併発,精査にて先天性AT-III欠損症(Type I)と診断,さらに術後癒着性腸閉塞症を併発,再手術を施行した症例を経験した.症例は30歳の男性,既往歴なし,腸閉塞症にて当院入院,保存的に経過みるも腹部症状が増悪し手術を施行.小腸の区域性壊死を認め小腸部分切除術施行.術後25日目に胸痛出現,CT検査にて肺梗塞症,門脈血栓症の合併を認め精査施行,先天性AT-III欠損症(Type I)と診断された.血栓溶解療法・抗凝固療法にて肺梗塞症・門脈血栓症は改善するも術後癒着性腸閉塞症を併発,保存的に改善せずAT-IIIを補充し再手術施行した.術後経過は良好で再手術後32日目に退院となった.文献的考察を加え報告する.
  • 下高原 昭廣, 関 恵理奈, 後藤 正志, 山田 晶, 芳賀 孝之, 青山 克彦
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2920-2925
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.肺がん検診を契機に,右肺上葉と左肺下葉に各1個の結節性病変を発見された.右肺病変は気管支鏡下生検で扁平上皮性乳頭腫の診断を得た.胸腔鏡補助下右肺上葉切除・胸腔鏡下左肺楔状部分切除を行い,左肺病変は乳頭型腺癌の診断に至った.術後経過は良好で,術後1年現在再発を認めていない.肺・気管支の孤立性乳頭腫は稀な腫瘍であるが,なかでも原発性肺癌の合併・併存例は極めて少ない.自験例では,これらが独立した部位に存在し,肺癌の組織型が合併・併存頻度の少ない腺癌で,共通の病因とされている喫煙歴,Human Papilloma Virus(HPV)感染所見を認めなかったため,偶発的に併存したものと考えた.
  • 石橋 佳, 北田 正博, 松田 佳也, 林 諭史, 平田 哲, 三代川 斉之
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2926-2930
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性,咳嗽と労作時呼吸困難を主訴に近医を受診した.胸部X線写真で著明な左胸水貯留を認めたため,精査目的に当科へ紹介となった.胸部CTで左胸壁,横隔膜に多発する結節を認めたが,左右の肺実質,縦隔,肺門部に明らかな異常所見は認められなかった.胸水細胞診では悪性細胞を認めず,確定診断目的に胸腔鏡下胸膜生検術を施行した.壁側および臓側胸膜,横隔膜に黒褐色の大小不動な結節を多数認め,同部位からの生検で悪性黒色腫の診断を得た.原発巣は幼少時から存在した先天性母斑から発生したものと考えられた.
  • 秋田 由美子, 坂本 英至, 法水 信治, 赤羽 和久, 新宮 優二
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2931-2935
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.2013年,検診にて胸部異常陰影を指摘された.近医にてCT施行し横隔膜ヘルニアを指摘され当院へ来院した.胸腹部CTでは左横隔膜下から胃と横行結腸の脱出を認めた.食後のつかえ感等の症状があり,待機的腹腔鏡手術を施行した.胃と横行結腸が脱出する複合型(IV型)食道裂孔ヘルニアを認めた.脱出腸管は容易に還納された.食道周囲を剥離し,露出した横隔膜脚を縫合し食道裂孔を閉鎖した.Parietex Composite Meshメッシュを腹腔内に挿入し食道に巻き付け周囲をヘルニアステイプラーで固定した.さらに,Toupet法による噴門形成術を追加した.術後再発所見なく経過中である.
  • 材木 良輔, 岡本 浩一, 北野 悠斗, 柄田 智也, 二宮 致, 太田 哲生
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2936-2940
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.検診の上部消化管内視鏡検査にて,15cm長の全周性long-segment Barrett's esophagus (LSBE)と,一部隆起性成分を伴う発赤調の塑造な粘膜病変を認め,複数個所の生検にて広範囲に及ぶBarrett食道腺癌の診断につき胸腔鏡下食道切除,腹腔鏡補助下胃管再建を施行した.切除標本の病理所見にて,腫瘍の範囲は12cm長のBarrett食道粘膜のほぼ全体を占めており,腫瘍の最深部は浅層粘膜筋板以深に及んでいることより,pT1a-LPM N0M0 pStage 0と診断された.LSBE由来のBarrett食道腺癌ではBarrett食道粘膜内にびまん性に発生することがあるが,Barrett食道粘膜のほぼ全域が癌に置換された症例に対する外科切除例である本症例のような本邦からの報告は比較的稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 東 敏弥, 山田 卓也, 辻本 浩人, 杉本 琢哉
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2941-2947
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性で,2014年11月にM領域の2型進行胃癌に対し,胃全摘術,Roux-en Y再建を行った.病理組織学的検査所見はpor1+sig,T2(MP),INFb,ly1,v0,N0,PM0,DM0,CY0,Stage IBであり,R0切除となった.2016年2月に術後経過観察目的で行った上部消化管内視鏡検査で吻合部近傍の食道再発と診断し,同年3月に吻合部切除術を施行した.再発部位は縫合線より5mm口側に認め,病理組織学的検査所見は初回手術時の所見と類似し,T1a(MM),INFa,ly0,v0,N0,PM0,DM0,CY0であった.自験例の再発形式として,再発部位は縫合線より5mm口側にあり,深達度はT1aで脈管侵襲は認めず,初回手術では切除断端陰性であることから,初回の術中操作中に生じた食道裂創部へのimplantationによる再発と考えられた.
  • 松本 浩次, 尾花 優一, 新井 俊文, 黒崎 哲也, 畑中 正行, 青木 いづみ
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2948-2953
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,男性.20歳台に十二指腸潰瘍に対し,広範囲胃切除Billroth-I法再建がなされていた.逆流症状を主訴に,上部消化管内視鏡検査を施行し,吻合部大弯側前壁寄り十二指腸側に,5.0mm大の中央に陥凹を伴う隆起性病変を認め,生検にて,G1-神経内分泌腫瘍(NET)と診断された.超音波内視鏡検査(EUS)では,腫瘍は第4層まで浸潤し,深達度は固有筋層以深と判断された.高齢であることより腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)による,吻合部局所切除術の方針とした.手術は内視鏡下に腫瘍を中心に十分なマージンを確保し全周性に針状メスにて全層穿破し,腹腔鏡下にそのマーキングに添って吻合部を局所切除し,欠損部を体内結紮にて縫合閉鎖した.病理組織学的にも摘出標本は断端陰性であった.吻合部NETに対し,LECSを用いることで遺残なく腫瘍を切除し,臓器機能を温存することが可能となった.
  • 林 裕樹, 金城 達也, 西垣 大志, 伊禮 靖苗, 西巻 正
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2954-2958
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.倦怠感と腹痛を主訴に近医を受診.胸腹部CT検査にて両側肺野に粒状影・空洞性病変を認め,腹部にガス像を伴う巨大な腹腔内膿瘍の所見を認めた.喀痰よりガフキー1号,PCRにて結核菌が検出され,胃液よりガフキー6号を認めた.活動性肺結核および腸結核による消化管穿孔の診断で,腹腔内膿瘍に対して経皮的にドレナージチューブを挿入後,加療目的に当院へ転院となった.腹部症状および腹部所見が軽度であったことや,低栄養状態で結核性腹膜炎による腹腔内の強い炎症および癒着が危惧されたため,先に保存的加療を行い,栄養状態の改善後に手術を施行する方針とした.抗結核薬の投与を開始し,腹腔内膿瘍に対してはドレナージを継続し,抗生剤の投与を行った.腹腔内膿瘍は徐々に縮小・瘻孔化し,第115病日に退院となった.今回,われわれは保存的に治療しえた腸結核による空腸穿孔の1例を経験したので,文献的考察を含めて報告する.
  • 松本 亮祐, 宮谷 知彦, 木下 貴史, 尾方 信也, 坂東 儀昭
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2959-2963
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    消化管重複症は,全消化管のどの部位にも発生しうる先天性疾患で,多彩な腹部症状を呈する.乳幼児期までに発見されることが多い先天性疾患であり,成人での発症は比較的稀である.特に腸管重複症の軸捻による急性腹症は報告例が少なく,術前診断は難しい.今回われわれは成人の腸管重複症の軸捻により,急性腹症をきたした症例を経験したので,本症例について若干の文献的考察を加えて報告する.症例は33歳,男性.昼食後に疝痛が出現し,夜間に腹痛増強と嘔吐を認めたため救急受診した.来院時に撮影した腹部造影CTで下腹部正中に拡張した小腸と,その口側で腸管が捻れた像を認め,絞扼性イレウスと診断し緊急開腹手術を施行した.Treitz靱帯から210cmの部位に正常腸管と交通のある重複腸管を認め,分枝部で720°時計回りに軸捻し,虚血に陥っていた.重複腸管を含む小腸部分切除術を行った.術後経過は良好で術後4日目に退院した.
  • 田中 菜摘子, 佐々木 勇人, 横山 直弘, 進藤 吉明, 齋藤 由理, 田中 雄一, 小野 巖
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2964-2967
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.約30年前に胆嚢総胆管結石症で手術の既往あり.胸部異常陰影の精査で施行したCT検査で腹腔内腫瘤を指摘され,当科に紹介された.CT上,結腸肝弯曲部に45×30mm大の辺縁に石灰化を伴う腫瘤を認め,腹腔内異物を疑い手術を施行した.腫瘤は横行結腸間膜に連続し,横行結腸壁と癒着していたため結腸部分切除術を施行した.膵前面との癒着もあり剥離に難渋した.術後は膵瘻と吻合部の縫合不全をきたしたが,ドレナージで保存的に治療した.腫瘤内部には血栓が充満し,繊維化した腫瘤壁の一部に断片化した縫合糸を多数認め,以前の胆嚢総胆管結石に対して施行した手術が関与した医原性動脈瘤と診断した.腸間膜動脈瘤は破裂に伴う腹痛,腹腔内出血,消化管出血により発見されることがほとんどである.本症例はCT検査で偶然発見され,腫瘤摘出によって診断しえた医原性横行結腸間膜動脈瘤の稀な1例であった.
  • 佐藤 慧, 加藤 久仁之, 大山 健一, 大塚 幸喜, 新田 浩幸, 佐々木 章
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2968-2973
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.発熱,右股関節痛および右下腹部痛を主訴に受診した.腹部CTで盲腸に全周性の壁肥厚と右腸腰筋に膿瘍を認めた.下部消化管内視鏡検査で同部位に全周性の腫瘍が存在し,生検で中分化型管状腺癌と診断され,腹腔鏡下手術を施行した.小腸間膜に腹膜播種を数箇所認めたが,合併切除は可能であり,D3郭清,回盲部切除術,膿瘍ドレナージを施行した.近年,腸腰筋膿瘍を合併した大腸癌の切除症例の報告があるが,腹腔鏡下に切除を施行したのは自験例のみである.低侵襲および拡大視効果による病変の局在,腹腔内観察,後腹膜解剖の把握が可能であり,腹腔鏡下手術の適応拡大に対し,興味深い1例となった.
  • 渡邉 利史, 山崎 祐樹, 寺井 志郎, 加治 正英, 前田 基一, 清水 康一, 内山 明央
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2974-2978
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    非常にまれである卵管癌の大腸転移を経験したため,文献的考察を加えて報告する.
    患者は70歳台の女性.S状結腸浸潤を疑う左卵管癌に対して単純子宮全摘,両側付属器切除,S状結腸部分切除,大網切除術を受けた.病理結果は漿液性腺癌であり,S状結腸への腫瘍浸潤や転移は認めず経過観察のみ受けていた.3年後のCT検査で上行結腸背側およびDouglas窩に播種を疑う病変を指摘され,内視鏡検査では上行結腸内腔へ突出する隆起性病変が確認された.腫瘍からの出血により貧血が進行するため,出血コントロール目的に外科的切除が行われた.
    特に合併症を認めず,術後12日目に退院となった.
    病理組織学的には卵管癌と同一の腫瘍細胞を認め,リンパ管侵襲とリンパ節転移を伴っていた.漿膜面に腫瘍の露出を認めないことから,播種性転移ではなくリンパ行性の転移と考えられた.
  • 鳩山 恵一朗, 阿部 隆之, 三浦 佑一, 上村 卓嗣, 佐藤 耕一郎, 加藤 博孝
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2979-2983
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,女性.便秘,腹痛を主訴に近医を受診し閉塞性イレウスの疑いで紹介搬送された.CT上,下行結腸の全周性壁肥厚と口側結腸の著明な拡張,左水腎症と左上部尿管腫瘤を認めた.画像上この2腫瘍は離れた位置にあった.大腸穿孔の危険性が高いと判断し,紹介同日緊急に横行結腸双孔式人工肛門を造設し,後日,下部消化管内視鏡を施行した.下行結腸に狭窄があるも生検で悪性所見なし.尿細胞診も悪性所見は出なかったが,臨床的に下行結腸癌,左尿管癌の重複癌と診断し,左半結腸切除術,左腎摘,左尿管全摘術を施行した.切除標本の肉眼的所見で狭窄のある下行結腸壁は硬い線維性肥厚を認めるも粘膜面は保たれており,大腸癌といえる所見ではなかった.病理組織的診断では尿管癌と酷似する組織像を下行結腸壁に認め,両腫瘍に連続性を認めず,尿管癌下行結腸転移の報告であった.尿管癌が結腸転移をきたした極めて稀な症例を経験したので報告する.
  • 三品 拓也, 神谷 忠宏, 加藤 岳人, 平松 和洋, 柴田 佳久, 青葉 太郎
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2984-2988
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,女性.検診の便潜血検査陽性を認め,下部消化管内視鏡検査を施行したところ,S状結腸に2cm大の0-I sp型ポリープを認め,EMRを施行した.EMRを施行し,病理組織学的所見は中分化管状腺癌,深達度SMで垂直断端陽性だった.約2カ月後に腹腔鏡下S状結腸切除術(D2郭清)を施行した.EMR瘢痕部に腫瘍の残存は認めず,第1群リンパ節に4個の転移を認めた(pT1N2aM0,Stage IIIA).周術期より認めた背部痛が悪化したため,骨シンチグラフィーとMRIを施行し,胸椎Th2の骨転移が疑われた.CTガイド下生検で大腸癌の骨転移と診断し,化学放射線療法を施行した.疼痛症状は緩和されたが,その後に化学療法を継続するも肺転移などが出現し,術後1年8カ月目に原病死した.今回,大腸SM癌に孤立性胸椎転移をきたした,非常に稀な症例を経験したので報告する.
  • 大野 陽介, 砂原 正男, 田中 友香, 坂本 譲, 植木 伸也, 木村 純
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2989-2993
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は80歳の男性.黒色便と心窩部不快感を主訴に救急車にて当院に搬送された.造影CTを施行し胆嚢出血と診断した.右下肢深部静脈血栓症に対しワーファリン内服中であり,著明なプロトロンビン時間の延長を認めたためビタミンK製剤の投与を行った.内視鏡的逆行性胆道造影を行い胆道ドレナージ目的に内視鏡的経鼻胆道ドレナージチューブを留置したが,血性排液が持続し,貧血の進行を認めることから入院翌日に緊急腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.胆嚢出血は上部消化管出血の1%前後と稀な病態ではあるが,出血性ショックとなることもあり迅速な診断加療を要する.本症例は,ワーファリン内服中に胆嚢出血をきたしたが,緊急腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し迅速に対応しえた.適切な症例の選択は必要であるが,胆嚢出血に対する早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術は迅速で低侵襲な根治的治療として有用である.
  • 山内 淳一郎, 小林 信, 宮崎 健人, 安食 隆, 土原 一生, 石山 秀一
    2016 年 77 巻 12 号 p. 2994-2999
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    67歳の女性,膵体部腫瘤に対して経胃的なEUS-FNAの後,膵体尾部切除術を施行した.病理結果は中分化型管状腺癌,治癒切除であり,補助化学療法終了後,経過観察中であった.術後22カ月,上部内視鏡検査でEUS-FNAの穿刺部位と一致した約30mm大の粘膜下腫瘍を認めた.生検にて腺癌の診断となり,膵癌診断時のEUS-FNA穿刺ルートに再発したneedle tract seeding(NTS)による胃壁転移の疑いにて胃部分切除術を行った.病理検査では粘膜下層を中心とした中分化型管状腺癌の増殖を認め,免疫組織染色でも膵癌原発巣と染色パターンが一致,膵癌胃壁転移と診断した.
    EUS-FNAの穿刺部位が切除範囲に含まれない膵体尾部癌術後には胃壁転移に注意が必要である.EUS-FNAによる胃壁へのNTSは腹膜播種の一亜型でありながら,早期発見により治癒切除が可能な再発形式と考える.
  • 小林 大悟, 野村 尚弘, 田邊 裕, 柴田 有宏, 高瀬 恒信, 矢口 豊久
    2016 年 77 巻 12 号 p. 3000-3005
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.未治療の糖尿病あり.腹痛を主訴に近医を受診,腹壁の蜂窩織炎の診断で入院するも症状増悪し,当院へ転院搬送.心窩部皮膚は一部壊死,体幹左側に広範に握雪感と圧痛を認めたが腹膜刺激症状は認めなかった.採血にて炎症反応は上昇,造影CTでは左頸部から左側腹部,背部にかけて広範に皮下気腫を認めた.臍左側では気腫が腹壁全層に至っていたが,腹腔内には遊離ガス像や腹水は認めなかった.以上より壊死性筋膜炎と診断し,腹壁のデブリードマンを行った.臍左側に至ると便汁が排出,開腹するとS状結腸が腹壁へ穿通していた.S状結腸憩室穿通による壊死性筋膜炎と診断し,S状結腸切除および人工肛門造設術を施行した.今回,S状結腸憩室穿通に起因した壊死性筋膜炎の1例を経験したので報告する.
  • 紙谷 直毅, 渡辺 明彦, 向川 智英, 石川 博文, 高 済峯, 松阪 正訓
    2016 年 77 巻 12 号 p. 3006-3010
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,女性.海外旅行中に腹痛を自覚し,医療機関を受診.現地で急性虫垂炎と診断され,開腹虫垂切除術を受けた.帰国後,術後4日目から発熱と腹痛を認め,近医を受診し,汎発性腹膜炎の疑いにて当科に紹介となった.腹部造影CT検査では,大網脂肪織の混濁と心嚢液,胸腹水貯留を認めた.このため大網脂肪織炎と診断し,腹膜刺激症状を強く認めたため,緊急手術を施行した.開腹すると漿液性腹水を,さらに大網の著明な腫大と硬化を認めた.また,虫垂断端部に異常は確認できなかった.このため大網が炎症の主座と判断し,大網切除,腹腔ドレナージ術を施行した.病理組織学的検査では,大網に強い好中球浸潤とフィブリン析出を認め,大網脂肪織炎に矛盾しない所見であった.術後経過は良好で約2週間で退院となった.大網原発の脂肪織炎の報告例は散見される程度しか存在せず,手術直後に発症した症例は稀である.文献的考察を加えて報告する.
  • 高井 亮, 木村 泰生, 荻野 和功, 藤田 博文, 邦本 幸洋, 山川 純一
    2016 年 77 巻 12 号 p. 3011-3014
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は37歳,女性.産後1カ月検診において仙骨前面に長径38mmの腫瘤を認めた.腫瘤は造影CTでは造影効果を伴っておらず,MRIではT1強調像にて高信号,T2強調像にて低信号を呈していた.周囲臓器との連続性はなく術前診断は困難であり,手術加療目的に当科紹介となった.鑑別疾患としては卵巣腫瘍,GIST,肉腫,リンパ節腫大,後腹膜腫瘍など良悪性を問わず様々な可能性を念頭に置く必要があった.治療および診断の目的で腹腔鏡下腫瘍摘出術を施行した.手術所見では,骨盤内に白色鶏卵大腫瘤を認め,周囲組織との連続性は認めず腫瘤は完全に腹腔内に遊離しており,これを摘出した.病理組織検査の結果は平滑筋腫であり,過去に腹部手術歴のないことから,自然発生のparasitic myomaであったと考えられた.腹腔鏡による手術は低侵襲であり,診断および治療に有用であった.
  • 土岐 朋子, 小田 健司, 清水 康仁, 安藤 克彦
    2016 年 77 巻 12 号 p. 3015-3019
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性.右下腹部痛,腹部膨満感の増悪,不正出血を主訴に来院した.MRI・CT検査で,骨盤内を中心として横隔膜下に及ぶ腹水の貯留と回盲部から連続する軟部組織の造影効果を認め,腹膜偽粘液腫を疑い開腹手術を施行した.腹腔内には約1.5kgのゼリー状物質が充満しており,回盲部の腸間膜に乳頭状腫瘍が露出していた.回盲部切除を施行し,腹腔内のゼリー状物質は炭酸水素ナトリウムで溶解してほぼ除去することができた.虫垂の粘液腺癌が原発であったが,術後4年目のCT検査では再発徴候は認めていない.腹膜切除,腹腔内温熱化学療法を専門施設以外で施行するのは困難であるが,炭酸水素ナトリウム溶液を用いて腹腔内の粘液を除去することは容易であり,有用と思われた.
  • 安藤 拓也, 前田 頼佑, 村瀬 寛倫, 中野 浩一郎, 深尾 俊一, 伊藤 寛
    2016 年 77 巻 12 号 p. 3020-3025
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,男性.糖尿病増悪のためスクリーニング目的に行った腹部CT検査にて,下十二指腸曲尾側に多血性嚢胞性腫瘍を認めた.十二指腸造影では下十二指腸曲の壁外性圧迫を認めた.十二指腸原発の粘膜下腫瘍または上行結腸の腸間膜腫瘍の診断にて,腹腔鏡手術を施行した.手術所見では後腹膜原発の腫瘍であり,腫瘍の背側は大動脈および下大静脈との強固な線維性癒着がみられ,その中に腫瘍に直接流入出する短い動静脈が多数見られた.腹腔鏡手術では腫瘍背側を水平方向からの視野で見ることができ,腫瘍の背側に流入する短い茎の腫瘍血管を安全に処理することが可能であった.摘出標本では充実部と嚢胞部が混在した大きさ55×42mmの腫瘍であり,病理検査ではparagangliomaの診断であった.稀な腫瘍である後腹膜paragangliomaを腹腔鏡手術にて摘出した1例を報告する.
  • 多田 浩之, 田中 宏樹, 天池 寿
    2016 年 77 巻 12 号 p. 3026-3029
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    35歳,男性.突如発症した激しい持続性の上腹部痛と嘔吐を主訴に受診.右季肋部に激しい圧痛と筋性防御を認めた.腹部MDCTにて腸管内ガス像とそれに連続する腸間膜を膵頭部の頭側の下大静脈前方に認めたため,Winslow孔ヘルニアと診断.初期治療としてイレウス管を挿入したが治療効果は乏しく,直ちに緊急開腹手術を実施した.開腹したところ,Winslow孔内に回腸の嵌入を認め,腸管虚血のため,温存不可能と判断し小腸切除を行った.約3横指に開大したWinslow孔を1横指程度に縫縮した.10日目に軽快退院した.Winslow孔ヘルニアではイレウス管での保存治療の効果が期待しにくいため,外科手術を第一選択とするべきと思われた.近年,腹腔鏡下に施行する報告例を散見するが良性疾患に対する緊急手術での安全性重視の観点からは,個々の症例の状態を慎重に評価した上で実施されるべきである.
  • 山野 武寿, 小林 照貴, 三村 太亮, 山野 陽土, 西村 東人, 山田 隆年
    2016 年 77 巻 12 号 p. 3030-3033
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    白線ヘルニアは,腹壁正中の腱膜組織の間隙から腹膜前脂肪組織や腹腔内臓器が脱出するヘルニアである.今回われわれは,腹膜前脂肪組織が脱出する白線ヘルニアに対して単孔式totally extraperitoneal approach (TEP)法に準じた腹膜外法により修復できた1症例を経験したため報告する.症例は46歳の男性で,上腹部皮下腫瘤の精査にて施行したCTにより白線ヘルニアと診断した.手術中,腹腔内からの観察ではヘルニア門を同定できなかったが,腹膜外腔の剥離にて白線から脱出するヘルニア(腹膜前脂肪組織)を認め,内容の全剥離後にメッシュによる補強を施行した.本邦では,成人白線ヘルニアに対する単孔式腹腔鏡手術例の報告は本症例が初めてであり,文献的考察を加え報告する.
  • 室谷 知孝, 杉本 聡, 宮 嵜安晃, 山邉 和生, 長岡 眞希夫
    2016 年 77 巻 12 号 p. 3034-3040
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.右大腿部の腫脹と疼痛が増悪してきたため近医を受診し,大腿ヘルニア嵌頓と診断され手術目的に当院を紹介受診した.腹部超音波および造影CTにて右大腿ヘルニア嵌頓で,嵌頓内容は虫垂であると診断し手術の方針とした.鼠径法にて手術を施行し,ヘルニア嚢を切開し,内容物が虫垂であることを確認した.ヘルニア創から虫垂切除術を施行後,ヘルニア門はUHS®にて補強した.術後経過は問題なく,現在までのところ合併症やヘルニア再発などは認めていない.大腿ヘルニアは主に閉経後の中年女性に多い疾患である.また,嵌頓を起こしやすいことが特徴であり,約30~50%の例で合併する.なかでも虫垂嵌頓を伴う大腿ヘルニアはde Garengeot herniaと呼ばれ,本邦での報告例は少ない.今回われわれはde Garengeot herniaの1例を経験したので,文献的考察を交えて報告する.
  • 林 太郎, 当广 遼, 伊集院 真一, 三里 卓也, 戸部 智
    2016 年 77 巻 12 号 p. 3041-3045
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは肺血栓塞栓症を発症した嚢状膝窩静脈瘤を経験した.症例は70歳の女性.労作時の動悸・息切れを主訴に当院受診し急性肺血栓塞栓症と診断され,血栓溶解療法を施行された.CTでは血栓を有する右膝窩静脈瘤(20mm径×6cm長)が指摘された.その後,新規経口抗凝固薬(Novel Oral Anticoagulants;NOAC)による抗凝固療法にて外来経過観察されていたが,右膝窩静脈瘤内の血栓再発を認めた.急性肺血栓塞栓発症5カ月後に当科紹介となり,外科治療の方針とした.手術は腹臥位右膝窩S字状切開でアプローチし,嚢状静脈瘤に対し縫縮術を施行した.術後経過は良好で,第9病日に退院となった.現在,NOAC内服による術後抗凝固療法と,弾性ストッキング着用による圧迫療法を継続している.術後7カ月が経過しているが,静脈瘤再発所見や血栓像は認めていない.有症状のPVAに対しては,抗凝固療法のみでは不十分であり,外科治療が推奨される.
国内外科研修報告
支部・集談会記事
編集後記
第78回 日本臨床外科学会 総会 演題:取下げ,訂正,変更,追加
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