2016 年 77 巻 2 号 p. 333-339
症例は83歳,女性.腹部腫瘤・腹痛・発熱を主訴に受診し,腹部正中左寄りに圧痛を伴う小児頭大の腫瘤を触知した.腹部造影CTでは腹腔内に最大径20cmの巨大腫瘍を認めた.腫瘍は胃穹窿部に連続し,茎部にて捻転していた.入院後に腹痛の増悪を認めたため手術を実施した.開腹すると,網嚢内に発育する表面平滑,淡褐色の巨大腫瘍を認めた.腫瘍は脾上極付近の胃穹窿部から発育していた.基部を起点に360°捻転していた.捻転を解除し,腫瘍基部を含む胃穹窿部を自動縫合器にて切除した.切除標本は巨大な嚢胞状腫瘍であり内腔は旧血様の液体で満たされていた.H.E.染色では充実部分に紡錘形細胞の束状の増生を認めた.KITおよびCD34が陽性であり,gastrointestinal stromal tumor (GIST)と診断した.非常に稀な病態ではあるが,腹痛を伴う巨大胃GISTでは破裂や出血だけでなく茎捻転も考慮すべきである.