日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡下に切除した日本住血吸虫卵による急性虫垂炎の1例
大屋 久晴越川 克己真田 祥太朗宇野 泰朗佐野 正明福岡 伴樹
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2016 年 77 巻 2 号 p. 373-377

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抄録

日本住血吸虫症は1978年を最後に国内での新規発生はないとされている.今回,腹腔鏡下虫垂切除術を行った急性虫垂炎の症例で虫垂内に日本住血吸虫虫卵が検出された.69年前に甲府市で日本住血吸虫症にかかった既往があり,この虫卵が虫垂炎を起こしたと考えられる稀な症例を報告する.
症例は79歳,男性.平成27年3月,右下腹部痛・嘔吐・食事摂取困難を主訴に当科を受診した.血液検査での炎症反応上昇と腹部CT で虫垂腫大を認めたため急性虫垂炎と診断し,手術方針とした.手術所見では腫大した虫垂を認め,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.病理組織所見では粘膜のリンパ濾胞形成と慢性炎症を認め,虫垂壁の線維性肥厚と石灰化した多数の日本住血吸虫の虫卵が確認され,陳旧性の肉芽腫像と考えられた.術後の便虫卵検査では異常を認めず,USとMRIで慢性肝炎・肝嚢胞の所見を認めたが,その他明らかな異常所見は認めなかった.

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© 2016 日本臨床外科学会
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