日本臨床外科学会雑誌
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症例
血胸で発見され緊急帝王切開後に胸腔鏡手術を行った肺動静脈瘻の1例
山本 将輝向田 秀則多幾山 渉
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2016 年 77 巻 3 号 p. 539-544

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抄録

症例は28歳,妊娠34週の女性.胸痛を主訴に当院を受診した.胸部X線検査にて右胸水貯留を認め,胸腔試験穿刺で血性胸水を確認した.CT検査で肺動静脈瘻を認めたため,肺動静脈瘻破裂による血胸と診断し緊急手術の方針とした.血胸ではあるが,血行動態が安定していること,34週を超え胎児の呼吸機能は成熟していることから,産婦人科医と相談し緊急帝王切開を先行し,その後に胸腔鏡手術を施行した.胸腔内には多量の血性胸水と動静脈瘻からの拍動性の出血を認めたため,肺動静脈瘻を含めた肺部分切除術を行った.胎児はNICUに入室することとなったが,母児共に術後は良好に経過した.妊娠を契機とする循環血液量の増加やプロゲステロンの増量による血管の拡張が原因となり,肺動静脈瘻が増悪し重篤な合併症を引き起こす可能性がある.妊娠中に肺動静脈瘻が増悪した場合,母体や胎児の状態に合わせた治療が必要となる.

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