日本臨床外科学会雑誌
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症例
大腿静脈から挿入した中心静脈カテーテルの迷入による腹直筋膿瘍の1例
大野 伯和山崎 悠太中島 高広高瀬 至郎楠 信也味木 徹夫
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2016 年 77 巻 3 号 p. 687-691

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抄録

症例は66歳,女性.入院先で経口摂取困難な状態となり,右大腿静脈から中心静脈カテーテルを挿入された.挿入後8日目から右下腹部痛,11日目から発熱,腹痛増強を伴う腹壁腫瘤が出現したため,腹壁膿瘍の診断で当院紹介受診となった.外来受診時,右下腹部に圧痛を伴う手拳大の腫瘤を触知し,超音波検査にて腹壁膿瘍と診断した.その後の腹部CT検査にて,右大腿静脈から挿入された中心静脈カテーテルが下腹壁静脈に迷入し,腹直筋膿瘍を形成している状態と診断.緊急手術を施行し,浮腫状に変成した腹直筋と膿瘍形成を認め,膿瘍内にカテーテルを確認した.カテーテルを抜去し創は開放ドレナージとして,感染が治まった後に再縫合した.中心静脈カテーテルの下腹壁静脈への迷入は稀であるが,大腿静脈から中心静脈カテーテルを挿入する場合は,下腹壁静脈など通常は挿入困難と思われる静脈への迷入の可能性にも留意すべきものと考えられた.

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