日本臨床外科学会雑誌
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症例
Etilefrine投与が有用であった食道癌術後乳糜胸の1例
高橋 一臣水野 豊原田 ジェームス統成田 知宏阿佐美 健吾鳩山 恵一朗
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キーワード: 食道癌, 乳糜胸, etilefrine
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2016 年 77 巻 4 号 p. 804-808

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抄録

症例は72歳,女性.胸部中部食道癌に対して胸腔鏡下食道亜全摘術を施行した.第2病日より経腸栄養を開始したところ,翌日の胸腔ドレーンの排液量が急激に増加した.第4病日に白濁した胸水を認めたため乳糜胸と診断した.完全静脈栄養としたが胸水量が減少せず,第7病日よりoctreotide acetateを投与した.全身状態が安定していたことと,CTで上大静脈に血栓が見つかり保存的治療を一貫して行った.第28病日よりetilefrineの投与を開始すると徐々に排液量が減少した.Etilefrineを中止しても排液量が増加しないことを確認し,第54病日に胸腔ドレーンを抜去した.食道癌術後の乳糜胸は比較的まれな合併症であるが,その治療に難渋することが少なくない.Etilefrine投与による乳糜胸の治療報告例は少ないが,副作用が少なく効果の高い有用な治療法であると考えられた.

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© 2016 日本臨床外科学会
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