2016 年 77 巻 4 号 p. 822-827
症例は71歳の男性で,上腹部痛を主訴に近医を受診し,超音波検査上での胃壁肥厚と,白血球異常高値(39,600/μl)を指摘され精査加療目的に当院紹介受診した.上部消化管内視鏡検査で胃体部小弯前壁に2型病変を認め,生検で胃癌と診断された.感染や血液疾患などの白血球上昇をきたす要因は認めず,granulocyte-colony stimulating factor(以下,G-CSF)値も415.9pg/mlと高値だったため,G-CSF産生胃癌を疑い,胃全摘術,肝合併切除(肝浸潤のため)を施行した.術後,白血球数とG-CSF値は正常範囲となり,また,病理組織学的には未分化癌で,免疫組織染色ではG-CSF陽性細胞が検出されたため,G-CSF産生胃癌と診断した.G-CSF産生胃癌は比較的稀な疾患で予後不良とされているが,術後2年間無再発で経過している症例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する.