2016 年 77 巻 4 号 p. 913-918
今回われわれは,まれな卵巣癌の異時性S状結腸転移の切除例を経験した.症例は33歳の女性.両側卵巣嚢腫の診断にて両側卵巣嚢種核出術を施行した.病理組織学的に左卵巣類内膜腺癌と診断,妊孕性を考慮し左附属器摘出術のみを追加して施行した.術後化学療法後,約1年6カ月のPET-CT検査で骨盤内S状結腸近傍にFDGの集積亢進を認めた.大腸内視鏡検査を施行すると,S状結腸に腫瘍性病変を認めた.同部位の生検にて卵巣癌の転移と診断した.卵巣癌のS状結腸転移による再発と診断し,S状結腸切除術,単純子宮全摘術,骨盤・傍大動脈リンパ節郭清術を施行した.術中,S状結腸の所属リンパ節の腫大を認めた.転移巣であるS状結腸もD3郭清を施行した.病理組織学的に卵巣癌のS状結腸転移と診断,傍腸管・中間リンパ節に転移を認めた.傍大動脈・骨盤リンパ節,他臓器に癌の転移を認めず,R0切除が得られた.