日本臨床外科学会雑誌
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症例
Tailgut cystが原発と考えられ急速に増大した粘液癌の1例
小野澤 寿志門馬 智之中村 泉大木 進司石井 芳正竹之下 誠一
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キーワード: tailgut cyst, 巨大嚢胞, 粘液癌
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2016 年 77 巻 4 号 p. 919-925

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抄録

症例は69歳,男性.64歳時に痔瘻にて手術を施行された.1年前より肛門部の硬結を自覚し,近医を受診したが,MRI検査にて骨盤腔内に巨大な嚢胞構造を認め,当科紹介となった.造影CT検査で直腸後壁と連続する7cm大の嚢胞状腫瘍を認め,穿刺吸引細胞診で粘液様物質を認めた.CEA 129ng/ml,CA19-9 87U/mlと著明高値を認め,FDG-PET検査では病変の一部にSUVmax4.4の集積を認めた.下部消化管内視鏡検査では,粘膜面の不整像は認めなかった.待機的に手術の方針となったが,4カ月の経過観察中に嚢胞病変が16×10cm以上増大し,腹直筋下まで達していた.術中所見では,腫瘍は恥骨後面・左閉鎖腔に強固に癒着しており,完全切除が困難であった.経括約筋・経開腹腫瘍切除術,S状結腸双孔式人工肛門造設術を施行した.術後病理組織診では高分化型粘液癌の診断であり,腫瘍の位置および臨床経過よりtailgut cyst由来の粘液癌が疑われた.術後良好に経過し,第22病日に退院した.

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