2016 年 77 巻 5 号 p. 1271-1276
症例は44歳,男性.筋強直性ジストロフィー症にて通院中であった.悪性腫瘍のスクリーニング目的に造影CT検査を施行したところ,胃および上行結腸に壁肥厚を認めた.上部消化管内視鏡検査で胃角部小弯前壁に0-IIc病変を認めた.また,下部消化管内視鏡検査で上行結腸に1型腫瘤を認め,生検でいずれもGroup Vであった.両病変に対して一期的に腹腔鏡下幽門側胃切除および腹腔鏡下右結腸切除術を施行した.麻酔は完全静脈麻酔で行った.手術終了後抜管は可能であった.術後合併症は特に認めず,術後第10病日に退院となった.筋強直性ジストロフィー患者に合併した胃癌・大腸癌の重複癌に対して腹腔鏡下手術を施行した稀な症例と考えられたので,文献的考察を加えて報告する.