2016 年 77 巻 6 号 p. 1452-1457
症例は37歳,女性.第3子を帝王切開にて出産後,下腹部のしこりを自覚し次第に増大傾向であった.出産から約2年後に突然の腹痛を認め,精査にて小腸間膜に14cm大の多房性嚢胞性病変を認めた.腸間膜腫瘍と診断し開腹手術を行った.開腹所見では,Treitz靱帯より30cm肛門側の小腸間膜内に15cm大の暗赤色の嚢胞性腫瘍を認め,空腸の一部を含め腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は多房性嚢胞性の腫瘍で,嚢胞内腔には血液が充満していた.病理組織学的には嚢胞の内腔は一層の扁平な上皮で被われており,免疫染色ではCD31(+),CD34(-),D2-40(+)で,小腸間膜リンパ管腫と診断した.成人小腸間膜リンパ管腫は比較的稀な疾患であり,本邦報告を含めた文献的考察を加え報告する.