抄録
大腸癌における精索転移は非常にまれな病態である.今回われわれは,直腸癌術後4年9カ月で左精索に転移性腫瘍を認め,切除した1例を経験したので報告する.症例は59歳,男性.2009年9月(54歳時),直腸癌に対して低位前方切除術(D3)を施行した.病理組織学的所見はStage IIIaであった.術後補助化学療法を施行し,経過観察中であった.2014年6月(術後4年9カ月),左鼠径部の有痛性の腫瘤を自覚し精査した.造影CTで左精索に造影効果を伴う腫瘤を認め,転移性精索腫瘍疑いと診断された.2014年7月,左高位除睾術を施行し,術後経過は良好であった.病理組織学的所見は中分化腺癌で,前回手術の直腸癌の転移として矛盾しない所見であった.退院後より化学療法を開始したが,術後1年4カ月で永眠された.大腸癌の精索転移は,本症例を含めて本邦ではわずか9例の報告を認めるのみであり,若干の文献的考察を加えて報告する.