2016 年 77 巻 7 号 p. 1609-1612
小児の鼠径ヘルニアは腹膜鞘状突起の開存に由来するものであり,治療としては後壁補強を必要としない術式である高位結紮法が基本である.一方で,高齢者の鼠径ヘルニアは腹壁の脆弱性に起因しており,後壁補強を行うtension free法が主流である.若年成人鼠径ヘルニアの発生機序は小児期と同様であることが多いとされており,高位結紮法での治療が可能と考えられる.当院では,2009年3月より小児に対してlaparoscopic percutaneous extraperitoneal closure(LPEC)を導入しており,若年成人の症例に対してもLPECを行っている.2009年から2014年で,若年成人の男性5人と女性6人に対してLPECを施行した.術後再発は確認されていない.長期的な経過の観察が必要だが,若年成人鼠径ヘルニアに対するLPECは適応拡大可能と考えられた.