抄録
症例は88歳,男性.繰り返す下血を主訴に前医を受診し,上部・下部消化管内視鏡検査が行われた.結腸に出血部位はなく,回腸内に血液が存在した.小腸出血が疑われ当院紹介受診となった.経肛門的ダブルバルーン小腸内視鏡検査を行い,遠位回腸にMeckel憩室が存在し,その起始部に潰瘍を認め同部位からの出血と診断した.手術所見では回盲弁から40cm口側にMeckel憩室を認め回腸部分切除を施行した.病理診断では憩室内に異所性胃粘膜や膵組織はなく,憩室起始部にUl-IIの潰瘍を認めた.高齢者のMeckel憩室出血は稀であり,今回検索しえた範囲では70歳以上の本邦報告例全てで異所性胃粘膜を認めず,憩室起始部に潰瘍を認めた症例が多かった.そのため,高齢者のMeckel憩室出血の原因は異所性胃粘膜を主な原因とする若年の出血機序とは異なり,長年の機械的刺激や血流障害などによる潰瘍形成が原因として考えられた.