日本臨床外科学会雑誌
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症例
膵粘液癌による腹膜偽粘液腫の1例
青山 純也櫻川 忠之丸山 正太郎内 雄介島津 元秀
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2016 年 77 巻 7 号 p. 1777-1783

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抄録

膵粘液癌の発生頻度は膵腫瘍全体の0.6%で稀な腫瘍とされている.今回,われわれは膵粘液癌に由来する腹膜偽粘液腫の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は78歳の男性.右側腹部痛の精査目的に当院を紹介された.CTで膵体尾部に約6cm大の嚢胞性腫瘍を認め,MRIでも同様に,内部に隔壁を有する壁の厚い嚢胞性腫瘍を認めた.また,網嚢内や肝表面,右傍結腸溝に液体貯留像を認めた.膵管内乳頭粘液性腺癌の網嚢内への穿破と診断し,膵体尾部切除術を施行した.開腹所見では,腫瘍周囲の網嚢内および肝周囲,Douglus窩に粘液の貯留を認め,腹膜偽粘液腫と診断した.病理組織学的には粘液癌と診断された.術後,膵断端の膵液瘻を発症したが保存的に軽快した.術後9カ月後のCTでは肝周囲に若干の腹水貯留を認めるのみであり,現在S-1内服にて外来経過観察中である.

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