抄録
後腹膜原発パラガングリオーマは比較的稀とされる.多くは非機能性あるいは機能性無症候性腫瘍であるが,術前診断されずに手術に至り,術中に予期せず異常高血圧が引き起こされることもある.今回われわれは,術前診断とそれに基づいた的確な周術期管理により安全に切除しえた無症候性多発パラガングリオーマの1例を経験したので報告する.症例は32歳の男性.腹痛の精査で行った腹部造影CTにて後腹膜に3つの腫瘤性病変を認めた.123I-MIBGシンチグラフィにて集積亢進を認めパラガングリオーマと診断した.尿中ノルアドレナリンが高値を示したため,術前よりdoxazosin投与を行った後,手術を施行した.術中の循環動態は概ね安定し,安全に腫瘍を完全切除できた.病理組織学的診断にて多発性パラガングリオーマと診断した.術後経過は良好で,術後14日目に退院となった.術後12カ月現在,外来にて無再発経過観察中である.