2016 年 77 巻 8 号 p. 1994-1999
今回,われわれは同時性孤立性脳転移による神経症状を契機に発見された盲腸癌に対し,脳転移巣を先行して摘出した後に,原発巣を切除し初回治療から術後化学療法を行わず15カ月の無再発生存を得た症例を経験したため報告する.症例は69歳の女性.平成26年8月頃から記憶力低下を認め,9月初旬に失語・筋力低下が出現したため当院脳外科受診した.精査で盲腸癌の脳転移と診断された.神経症状が急速に進行したため,発症から2週間後で緊急開頭腫瘍摘出術を施行された.さらに,腫瘍床への低位放射線照射(SRT)を施行した後に腹腔鏡下回盲部切除術(D3リンパ節郭清)を施行した.最終診断はC,type2,tub2(>tub1),pT3,int,INFb,ly1,v2,pN0,pM1(脳),fStage IVであった.術後化学療法は患者が希望せず経過観察となったが,幸いに初回治療後15カ月経過し神経症状なく,無再発生存中である.