2016 年 77 巻 8 号 p. 2069-2073
症例は40歳,男性.会社の診療所で高血圧を指摘され,精査目的で当院紹介受診.高血圧症の原因精査目的で行われた腹部造影CTにて,脾動脈の上極枝と下極枝の分岐部に24×18mmの動脈瘤を認めた.最大径は2cmを超えており治療の適応と判断した.部位・大きさ・手術侵襲を考慮し,脾温存腹腔鏡下脾動脈瘤切除術を施行した.動脈瘤を周囲組織より剥離し,中枢側・上極枝・下極枝の3カ所でクリップし,動脈瘤を切除した.脾臓の色調変化は上極の一部のみで,脾温存は可能であった.術後の病理検査では内皮細胞下の血管内膜への粥状硬化が主体の動脈瘤であったが,一部で中膜壊死の像を伴っていた.術後の腹部造影CTにて,側副血行路により脾臓の血流は保たれていることを確認した.脾動脈瘤は比較的稀な疾患であるが,部位や大きさによっては,脾温存腹腔鏡下脾動脈瘤切除術も選択肢の一つになりうると考えた.