2016 年 77 巻 9 号 p. 2320-2324
症例は76歳,男性.体動時に下腹部痛を認め,近医で左腹直筋内の腫瘤を指摘されたため当院紹介.CTで左腹直筋内に辺縁造影効果を伴う23×23×52mmの低信号域を認めた.腫瘤はMRIのT1/T2強調画像で低信号,拡散強調画像で高信号を示した.画像所見では鑑別診断を行うことは困難であり,超音波下針生検を追加施行した.針生検の結果で紡錘形細胞肉腫が疑われたため,腫瘍摘出術を施行した.摘出標本の病理組織学的検査でzonal patternと呼ばれる腫瘤辺縁部の骨梁形成を認め,骨化性筋炎と診断した.術後に再発を疑う所見は認めていない.
骨化性筋炎が腹直筋内に発生することは極めて稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.