抄録
症例は59歳,男性.約4年2カ月前に食道癌にて右開胸開腹食道亜全摘術,胸骨後経路胃管再建を施行した.既往症に慢性腎不全,脳梗塞後遺症でアスピリン内服歴がある.プロトンポンプインヒビター(PPI)内服中,無再発で,上部消化管内視鏡検査(EGD)を毎年施行し,半年前に潰瘍は認めなかった.
約10日前より黒色便を自覚し,前胸部から背部の激痛を主訴に救急搬送となった.精査の結果,胃管潰瘍心嚢穿破と診断し,同日心嚢ドレナージし状態の改善を得た.第16病日のEGDで穿通所見はなく経口摂取を開始し,第22病日に自宅退院となった.本症例はPPI内服中,定期的にEGDを施行され,Helicobacter pylori抗原陰性であった.講じうる予防策を行っていても胃管潰瘍発症の可能性があると示唆された.救命困難な報告例も少なくなく,発症した際には速やかな心嚢ドレナージが不可欠と考えられた.